ロシア・ウクライナ外相が初会談へ、仲介役トルコの思惑と難しい立場

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リビウ=高野裕介 エルサレム=清宮涼
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 ロシアによるウクライナ侵攻で欧米諸国が停戦への糸口をつかめないなか、近隣国が仲介への動きを強めている。10日にはトルコがロシアとウクライナ双方の外相を招いて3者会談を開催するほか、イスラエルも積極的に双方との対話を重ねている。ただ、ロシアはウクライナに対する強硬姿勢を貫いており、外交努力が実を結ぶかは見通せない。

 「これが平和と安定に向けた転換点となり、重要な一歩になることを望む」。トルコのチャブシュオール外相は7日、同国南部アンタルヤでの3者会談に向け期待を示した。ロシアのラブロフ外相と、ウクライナのクレバ外相が直接会うのは侵攻後初めてとなる。

 AFP通信などによると、ロシア外務省もラブロフ外相が出席する予定だと認めた。6日に行われたトルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領との電話協議で、会談についての合意があったという。

 北大西洋条約機構(NATO)加盟国でもあるトルコは黒海を挟んでロシア、ウクライナと向き合い、黒海から地中海へと抜けるボスポラス、ダーダネルス両海峡を抱える。仲介に積極的な役割を果たすことで、国際社会に存在感を示し、人権問題などをめぐってぎくしゃくする欧米との関係改善に向け、自らの立場を強めることができるとの算段もあるとみられる。

 エルドアン氏はロシア、ウクライナ双方と軍事協力などを含めて密接な関係を築く独自の立場を生かし、これまで緊張緩和に向けた役割に意欲を示してきた。

 ウクライナに対しては2020年のナゴルノ・カラバフ地域をめぐるアルメニアとアゼルバイジャンの軍事衝突で威力を発揮した国産ドローン「TB2」を売却。ロシアによる14年のクリミア半島併合は認めない立場で、今回の侵攻についても「認めることはできない」と述べるなど、ウクライナに寄り添う姿勢を見せてきた。

 一方、ロシアとも軍事、経済両面でつながりが深い。トルコはNATOの一員でありながら、ロシア製のS400地対空ミサイルシステムを購入。ロシアはトルコにとって最大の天然ガス供給国で、訪れる観光客の数も最も多い。シリア内戦などではそれぞれが敵対する勢力を支援するが、利害の一致する部分で協力してきた。

来年に大統領選のエルドアン氏が恐れるロシアの怒り

 それゆえ、今回の侵攻が泥沼化すれば、トルコは難しい立場に追いやられる。

 ロシアの怒りを買えば、ガス…

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    駒木明義
    (朝日新聞論説委員=ロシア、国際関係)
    2022年3月10日15時32分 投稿
    【視点】

    ロシアとトルコは、シリア情勢を巡っても、基本的には対立しているのに、緊密に利害を調整してきた関係です。ロシアはアサド政権支持、トルコは打倒アサド政権を掲げています。 中東での利害調整だけではありません。2020年にはロシアとトルコを黒海経

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