選択的夫婦別姓 請願を審査 宇治市議会

小西良昭
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 結婚する際、夫婦が同じ姓にするか別の姓にするかを選ぶ「選択的夫婦別姓制度」の導入を国に求めてほしいと、立命館宇治高校(京都府宇治市)の2年生4人が宇治市議会に請願した。市民環境委員会(7人)が4日に審査し、生徒が参考人として説明した。

 高校生の請願は同市議会で初めて。4人は向川巴菜(むこうがわはな)さん=奈良市=、石田璃子さん=木津川市=、松井そらさん=八幡市=、宗戸琴葉さん=城陽市。授業で学び深く調べるにつれ、選択的夫婦別姓制度を導入すべきだと考えて請願を提出したという。「人々に選択の自由を与えられる」「悩みを抱える人たちを助けたい。私たちが成人して同姓か別姓かを選択する時には自由に選択できるようになって欲しい」と趣旨を記し、制度導入を国に求める意見書を出すよう求めた。

 委員会では、向川さんが議員の質問に答え、「同姓でなくても家族の絆は変わらない」「多くの女性が夫の姓に変える実情がある。女性の姓にしてみようという流れも生まれる」「通称使用で海外のホテル予約で困った社長の話を聞いた」「改姓で社会人のキャリアが分断されたら、女性にとって権利がないことになる」「制度導入で多少の混乱が生じても、長い目でみれば、不便なく過ごせる世界になる方がよい」などと制度導入の利点を訴えた。

 きっかけになったのは、昨年6月、政治・経済の授業で選択的夫婦別姓について討論したことだった。その後、4人は手分けして各市議に連絡。今年2月までに、各会派と意見を2度交わした。反対意見も聞き、請願文を3回書き直した。

 委員会は向川さんとの質疑の後、4対2の賛成多数で請願を採択した。25日の本会議で採択されれば、議会が国に意見書を出す見通し。採決の後、4人は「授業で学ぶだけでなく、自分たちが活動し意見を言うことで、これから何十年も生きていく社会を住みやすい場所にしたい」と話した。(小西良昭)

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 今回請願した立命館宇治高校生の代表の意見陳述と、宇治市議会市民環境委員会委員との主な質疑は次のとおり。

 生徒代表の意見陳述

 「政治・経済のディベート授業で選択的夫婦別姓制度を知った。調べるうちに、自分たちが動くべきだと考え、請願した。婚姻時に改姓を強制され、不便に感じている人たちの声を聞いた。改姓で婚姻というプライバシー情報の漏洩(ろうえい)やキャリアの分断などの問題も感じているそうだ。旧姓使用の拡大という案もあるが、二重管理コストが生じたり、海外では通用しなかったりして全面的な問題解決につながらないと考える」

 「議員さんと会議をさせてもらい、日本の文化である戸籍が崩れる、親子で別姓になる、などの反対意見も聞いた。しかし、選択的夫婦別姓制度は同姓も別姓も認められ、大きなメリット。これからの未来をよりジェンダー平等に近づけられると考える。私たちが大人になり、社会に出る頃には、そのような社会が実現していることを望む。選択的夫婦別姓制度の導入で幸せな人が増えるように、意見書を提出していただきたい」

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 ――子どもの姓をどうするかや、家族の名称として姓の意味が失われる点はどうか

 「選択的なので別姓、同姓どちらにもできる。私たち4人の中にも親子で姓が違う人がいるが、何の問題も感じていない。親と姓が違っても家族だし、親子で姓が違うのが当たり前の国もある」

 ――夫婦別姓をジェンダー平等と考える理由は。旧姓の通称使用の拡大ではなく、制度として別姓にすべきメリットは

 「結婚するとき、多くの女性が夫の姓に変える現状がある。選択的夫婦別姓制度が導入されることで、女性の姓にしてみようかなという流れが社会に生まれるといい」

 ――いろいろ聞いた意見とは

 「ある社長が海外で泊まるホテルに行った。会社が旧姓で予約したため、別人だと言われて困ったと聞いた。新しい制度の導入で多少混乱が生じるかもしれないが、長い目でみて未来を考えたら、困っている人たちが少しでも不便なく過ごせる方がメリットがある」

 ――ジェンダー問題として議論したことはあるか

 「私たちも女性の一員として考えた。社会人になってキャリアを積み、姓が変わることでキャリアが分断されてしまったら、それ自体が女性としての権利がないことになってしまうと議論した」

 ――女子差別撤廃条約の締約国を国連の委員会が審査し、2016年に民法改正、政治への女性進出などを挙げて日本政府に改善を勧告した

 「直さないといけないところが日本にまだたくさんある。私たちが高校生として請願し、活動することで、つながりがあるものに興味を持ってもらえたらとの思いがある」

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