ウクライナ危機、日本の「知の再武装」が問われている 寺島実郎さん

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聞き手・池田伸壹

 むき出しの暴力がウクライナで衝突し、多くの血が流れている。実業界や大学など領域を超えて活動する寺島実郎さんは、2003年から経団連の日本ロシア経済委員会ウクライナ研究会委員長を務めて以来、当時の首相や政財界のキーパーソンと交流してきた。この危機をどう受け止めるべきかについて、語ってもらった。

てらしま・じつろう

1947年生まれ。三井物産常務執行役員などを歴任。医療・防災産業創生協議会会長。著書に「人間と宗教 あるいは日本人の心の基軸」など。

 ――多くの日本人にとってウクライナはなじみの薄い国です。

 「現地を訪れて実感したことですが、欧州とロシアの綱引きの中心で、ユーラシアの地政学で決定的な役割を果たしてきた要衝です。今回の危機は世界史上、また日本にとっても重要な転機になる可能性があり、それを立体的に理解するため視野に入れておきたい点があります」

 「まずウクライナと日本の縁です。近代日本が向き合ってきた極東ロシアに住むロシア人のほぼ半数はウクライナ系です。それは3回にわたって集団移住させられたからです。19世紀にロマノフ王朝のアジアへの野望でウラジオストクの建設が始まり、6万人の農業移民が送り込まれたのが最初。2回目は1917年のロシア革命で革命に対抗したウクライナ人がシベリア送りに。3回目は第2次大戦で、ヒトラーと連携して独立を試みた勢力がスターリンによりシベリア送りに。中には日本にやって来た人も多く、横綱大鵬の父親もウクライナ人です」

ウクライナの危機は「対岸の火事ではない」と言います。ロシアとの領土問題を抱え、唯一の被爆国でもある日本には、どのような発信や行動が求められているのでしょうか。記事後半では、経済的な影響から世界の分断につながる可能性も指摘します。

日本がプーチン氏を増長させた面も

 ――ロシアにとってはどんな存在ですか。

 「国の原点と言っていいでし…

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