第8回30年前に習った人権は当てはまらない 谷口真由美さんが語る差別
「あの人にあって、私にはない人権って何なん?」。法学者の谷口真由美さんはドキッとする言葉で私たちに問いかけます。人間は差別をしてしまう存在だからこそ、「人権」を学び続ける必要がある。どういうことでしょうか。
部落差別の問題もそうですが、当事者が「いまだにあんねん」と差別の事実を突きつけることは大事です。ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動も女性差別も同じで、「もうなくなったやろ」っていうのが「ニューレイシズム」。でも、あるやん、実際。
「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と結ばれる水平社宣言から100年。日本初の人権宣言と言われ、社会のあらゆる人権問題の克服に向けた原点となってきました。誰にも潜みうる差別の心を溶かす「熱」と、すべての人を等しく照らす「光」を手にできるのか。人間の尊厳を重んじる宣言の精神を改めて見つめます。
かつて同和対策事業で部落出身者の公務員採用を増やしたことがありました。「人権」というのは、資源やパイを分けていく行為でもあるので、「今までこんな暮らしができたのに、あいつらが台頭してきたからできなくなった」と主張する人が出てくる。
人間が持つ具体的な権利を指す人権や「SDGs(持続可能な開発目標)」って、語れば語るほどみんながしんどくなっていくことでもあるんです。そうすると「やつらはこんなに恵まれてるで」って、部落の人や在日コリアンが暮らす地区の映像を公開するような人が現れる。それって何の正義なんやろう。知的好奇心だろうが正義感だろうが、当事者にとって暴かれたくないプライバシーをさらすのは間違いです。
人間って、差別をしてしまう存在やと思うんですけど、それを理性と知恵で何とかしようというのが「人権」という概念です。人間の感情に備わっている「やさしさ」とかそういうものじゃないし、欲求でもないから、勉強するしかない。
声を上げ続ければ0.1ミリでも変わる
小中学校で30年前や40年…
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