山火事から1年、足利市が検証報告書

根岸敦生
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 栃木県足利市の両崖(りょうがい)山中から出火し、約167ヘクタールの山林に燃え広がった山火事から1年。足利市は検証報告書をまとめた。火の手が迫った大岩山毘沙門天では21日、山火事が再び起きないよう「火伏せ」の法要があった。

 山火事はたばこの火の不始末から燃え広がったとされ、鎮火まで23日間を要した。火が民家まで迫り、上水道や市内の交通に支障が出るなど、市民生活に影響を与えた。

 寺の地元の女性がつくる「どんぐりストラップの会」は21日、毘沙門天にモンゴリナラ(フモトミズナラ)の実のハカマを使ったストラップを奉納した。メンバーの柿沢さな江さん(72)は「火の手が本当に迫ってきました。手にした方には山のことに気を配ってほしいと作りました」。

 寺では「破火魔(はかま)」と字をあてて参拝客に手渡した。沼尻了俊執事は「再び山火事が起きるようなことがないよう、毎年この日に『火伏せ』の法要を続けていきたい」と話した。

 検証報告書によると、気象庁や自衛隊、県、消防団を交えた検証では、第一に初動体制のあり方に問題があったと指摘。避難所の開設・運営、災害医療対策の円滑化も求められた。

 出火当日の21日に県防災ヘリの応援は得たものの、司令塔の「災害対策本部」設置が22日となり、関係者が一堂に集まれる広い場所に移ったのは24日だった。気象状況を考えれば、延焼範囲が広がることは想定できたとされた。

 この教訓から、新たに「大規模林野火災時における災害対策本部設置基準」が定められた。乾燥注意報などが発令され、最大風速が毎秒5メートルを超える見込みがあり、火の手が住家に約500メートルに迫る場合は即座に災害対策本部を設けることになった。

 第二に、市外の消防機関に対する派遣要請と受け入れ体制構築の見直しについて指摘された。市は危機管理課と消防本部の連携を確認し、県消防防災課との連携も強化する。初動対応のマニュアル化を決めた。

 市危機管理課の近藤隆久課長は「山火事では国、県、多くの市町の助けを借りた。山火事は常に起こりうる。今回の検証報告を元に体制を整える」と話した。報告書は市のウェブサイトで公開されている。

     ◇

 昨冬の両崖山の山火事を教訓に、足利市は「足利市の美しい山林を火災から守る条例」案を発表した。24日開会の市議会定例会に提案し、4月1日の施行をめざす。

 条例案では、山林火災の予防に向けた取り組みを促すため、山中では入山者に原則として①加熱式たばこや電子たばこを含めて禁煙とする②たき火、花火などの煙火、ライター、ストーブ、コンロなどの使用を禁止――などを定めた。罰則規定はない。

 両崖山の山火事の出火原因について、市消防本部は「たばこの火の不始末」とみている。早川尚秀市長は市外からのハイカーにも条例の周知を進めるため、「火の取り扱いについて注意をしてもらうよう呼びかけていきたい」と話した。根岸敦生

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