神大ロケット、宇宙めざして 賞受賞の教授「2年後には100キロ」

進藤健一
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 安全で安価な次世代型「ハイブリッドロケット」の実用化に取り組む神奈川大学の高野敦教授(47)が、日本機械学会の業績賞(宇宙工学部門)を受賞した。同大学の研究グループは昨秋、民間団体としては国内最高の高度10・1キロ(速報値は10・7キロ)を記録。その実績が評価された。

 「学生と一丸となって課題を克服し、2024年には宇宙空間に到達させたい」。同大航空宇宙構造研究室の高野教授は、業界お墨付きとなる業績賞の受賞を喜ぶ。2年後に大気がほぼなくなる高度100キロの宇宙空間に手がけるロケットを到達させるのが目標だが、「懸案事項が目白押し」と話す。

 ハイブリッドロケットは、一般的に固形燃料を液体の酸化剤で燃やす。爆発の危険が少なく有毒なガスも出ないため環境にも優しい。燃料が安価なため、低コストでの超小型衛星打ち上げの実用化が期待されている。

 次のステップは、来年9月にも、目標高度の30キロまでロケットを打ち上げること。機体の全長は約4メートルと前回と変わらないが、燃料と酸化剤は倍必要になるため、機体の直径は一回り大きい約20センチ、重さは3倍近い約100キロになる。

 神大OBが経営する東京都大田区の町工場の協力でエンジンの大型化を進めており、相模原市緑区の企業の力添えで酸化剤が入るタンクをアルミ製からチタン製に変えるなど機体の軽量化にも取り組んでいる。

 前回、打ち上げは成功したものの、ロケットの位置を把握するためのGPS信号が途絶えたため、海上に落下した機体を回収できなかった。「当日は霧のために、計測部を機体から分離させる機器が結露で作動しなかった。パラシュートも開けずに着水したのが原因とみられる」と高野教授。計器をコーティングし、ケースに収納するなど防水対策も万全にする考えだ。

 最終的に宇宙空間に打ち上げる燃料を収納するには、機体の直径も重量も大きくなるため、さらに軽量化が必要になる。高野教授は「大気が薄くなる中、いかに飛行方向を安定させるかなど解決すべき課題は多い」と話す。

 最も頭を悩ませているのは、打ち上げ費用だ。来秋の打ち上げだけでも前回の倍以上の約400万円はかかる見通し。このため、クラウドファンディングなどで資金を確保することも検討している。(進藤健一)

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