夢洲へのIR誘致目指しインフラ整備272億円 大阪市の新年度予算

新谷千布美 添田樹紀
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 大阪市は16日、総額1兆8419億円の2022年度一般会計当初予算案を発表した。コロナ禍からの企業業績の回復などに伴う市税収入の増加で、前年度より118億円(0・6%)増えた。予算規模が前年を上回るのは2年連続。財政収支は現行の算出方法になった12年以降、初めて収支不足から脱却する見通しだ。

 市税収入は3年ぶりの増加で、前年度比533億円(7・5%)増の7652億円となる。個人市民税が134億円増の2221億円▽法人市民税が312億円増の1103億円▽固定資産税都市計画税が84億円増の3757億円など。

 借金にあたる市債発行額は422億円(23・2%)減の1399億円。このうち284億円は臨時財政対策債で、国が将来返済を担うとされている。特別会計を含めた市債残高は3兆1669億円で、04年度以降最少となる見込みという。

 歳出増につながったのは、2025年大阪・関西万博関連事業、老朽化した市営住宅の補修・建て替え事業(384億円)、大阪府立大学と市立大学を統合して今春開学する「大阪公立大学」のキャンパス整備(68億円)など。

 市立高校の府への移管などで、人件費は101億円減の2909億円となった。

 前年度は228億円の収支不足だったが、22年度は貯金にあたる財政調整基金を取り崩さなくても収支は均衡する。今後10年の財政収支については、国の経済成長見通しなどを踏まえて23年度と25~29年度は12億~67億円のプラスとなる一方で、万博関連経費が増える24年度は92億円、30、31年度は高齢化の進展などで22億~34億円の収支不足が生じると見込む。

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 新型コロナウイルス対策関連として総額477億円を計上した。

 ワクチン接種会場の確保やワクチン配送などに116億8千万円、PCR検査の民間委託などに83億5千万円を盛り込んだ。

 自宅療養者の健康観察を強化するため、民間派遣の看護師らを1日あたり76人から180人に増員し、現在2万4千個を確保している血中酸素飽和度を測るパルスオキシメーターの発送などに38億6千万円を充てる。

 大規模感染症に対応できるよう、現在3カ所に分散している市保健所の執務室を市所有の複合施設「ヴィアーレ大阪」に集約する。24年度の運用開始に向けた設計費用に4千万円を盛り込んだ。

 社会経済活動の活性化のため、2億6千万円をかけて大阪城公園で音楽ライブなどを開催する。

 また、20年度から実施している小中学校の給食費無償化について、所得制限なしで継続するため64億7千万円を計上した。

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 夢洲(大阪市此花区)で開かれる大阪・関西万博の推進事業には54億円を計上した。このうち31億8千万円は、総額1850億円の会場建設費のなかの大阪府と市の負担分約600億円の一部。府・市が合同で出展する大阪パビリオンの実施設計などの費用7億4千万円も含まれる。

 これとは別に、会場へのシャトルバス専用道路とする阪神高速淀川左岸線の工事費として286億1千万円を確保した。

 夢洲にはカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致も目指しており、夢洲インフラ整備に272億3千万円(特別会計を含む)を盛り込んだ。内訳は、大阪メトロの新駅の改札前広場整備などに117億1千万円、周辺の橋や道路の拡幅などに155億2千万円。

 IR建設予定地の液状化や土壌汚染への対策費788億円については、市の支出を約束する「債務負担行為」の設定だけを行い、実際の支出分は23年度以降に計上する。(新谷千布美、添田樹紀)

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