自転車で死亡事故、ウーバー配達員に有罪判決 東京地裁

新屋絵理

 飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員が雨の中、自転車で歩行者をはねて死亡させたとして、自転車事故では異例の業務上過失致死罪で在宅起訴された男(29)について、東京地裁は18日、禁錮1年6カ月執行猶予3年(求刑・禁錮2年)の判決を言い渡した。鏡味薫裁判官は、悪天候時などに支払われる追加報酬を得るため速度を上げたと指摘し、「過失は重い」と述べた。

 被告の弁護側によると、控訴しない方針という。

 判決によると、被告は昨年4月17日夜、高性能のロードバイクで飲食物を配達中、東京都内の横断歩道を渡っていた男性(78)をはねて脳挫傷で死亡させた。

「取り返しのつかないことをした」 被告は法廷で謝罪

 判決は、雨の影響で事故当時は前後左右が見えにくかったにもかかわらず、ライトも装備せず、時速20~25キロという「自転車として相応の高速度で走行した」と認定。横断歩道に差し掛かっても、「速度調整や前方左右注視の注意義務を怠った」と説明した。ただ、反省状況などをふまえ刑の執行を猶予した。

 被告はこれまでの公判で、迅速な配達のために高性能のロードバイクを利用していたと説明。ブレーキパッドは大きくすり減りライトも壊れていたが、ブレーキは「利きが悪いとは思っていなかった」と述べ、ライトについては「配達を優先し、調達を後回しにした」と語った。

 事故当日は雨が降り始めていたが、悪天候時などに支払われる追加報酬の「クエスト」などを得るために配達を続けたという。遺族に対しては「取り返しのつかないことをした」と謝罪した。

 検察側は論告で、被告が注意していれば「衝突は容易に避けられた」と主張。「自転車の無謀運転が大きな社会問題となりつつあることも踏まえ、厳しい処罰が必要だ」として禁錮2年を求刑した。

 弁護側は「自分の責任と向き合って生きていこうとしている」などとして執行猶予付き判決を求めていた。

 配達員らの労働組合「ウーバーイーツユニオン」の調査によると、配達員の事故15件のうち約7割が追加報酬の対象時に起きていた。(新屋絵理)…

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