伐採対象の木971本 神宮外苑再開発計画案、都審議会が承認

小林太一 武田啓亮

 明治神宮外苑地区の再開発計画案が9日、都審議会で認められた。東京五輪・パラリンピック前から街並みは変わり始めたが、2036年までに順次、大型スポーツ施設や商業施設ができる。一方、大規模な樹木伐採計画も明らかになり、近隣住民の賛否は割れた。

 一帯の再開発は、老朽化した神宮球場や秩父宮ラグビー場を、場所を入れ替えて新たに建設するなどの内容。この日の審議会で承認されたことで、正式に計画が動き出すことになる。

 再開発の順序はこうだ。

 まず、神宮第2球場の跡地に、新ラグビー場を造る。現在の秩父宮ラグビー場の跡地には、ホテルを併設した新たな野球場ができる計画だ。さらに、神宮球場の場所は、広域避難場所としても活用する約1・5ヘクタールの中央広場にする。

 また、商業施設やオフィスが入る高層ビルも建設予定で、28年に地上38階建て(約190メートル)、31年に同40階建て(約185メートル)の工事が完了する。ホテルやスポーツ関連施設、テニス場の整備など、全てが完了するのは36年の見通しだ。

 明治神宮外苑の特長である、緑豊かな景観はどうなるのか。

 一帯にはケヤキやクスノキ、イチョウなど、状態の良い木が1114本、悪化している木が267本あった。340本を残し、70本を移植して971本を伐採する予定だという。都内有数の秋の観光名所で、青山通りから約300メートルにわたる「いちょう並木」は伐採の対象外だという。

 再開発は、三井不動産、外苑近くに本社を構える伊藤忠商事のほか、明治神宮、日本スポーツ振興センターの4者が行う。三井不動産は朝日新聞の取材に対し、「歴史的な重要性に配慮しながら、新たな植栽で緑地を創出する計画だ」としている。(小林太一)

     ◇

 再開発地域の周辺住民や神宮外苑を訪れた人からは、様々な声が聞かれた。

 「土地勘がない僕らでも利用しやすくなりそう」。大阪市から来ていた会社員男性(31)は再開発を歓迎した。プロ野球を見に神宮球場に何度か来たことがあるが、周辺に飲食店や宿泊施設が少ない印象を持っていたという。

 一方、親子3代で東京ヤクルトスワローズのファンだという世田谷区の自営業塩谷香織さん(43)は「素朴で静かな環境が神宮の良さ。東京ドームの周りのようににぎやかすぎるのは違和感がある」。この日は、スワローズグッズを購入するついでに、愛犬を連れての散歩を楽しんでいた。「木を切ってまで一帯に商業施設を作る必要はあるのか」と懐疑的だった。

 伐採をめぐっては不安の声が相次いだ。有名ないちょう並木だけでなく、一帯には広葉樹が多く生息している。

 近くに住む女性(42)は「あちこちで広葉樹が切られてしまうのがショック」。中学生になる長女が小さい頃、ドングリを拾って遊ぶのが親子の楽しみだった。「都会の真ん中で自然を感じられる貴重な場所。できるだけ今のままの姿を残してほしい」

 毎日散歩しているという渡辺保さん(86)も「ホテルやオフィスビルみたいな、そこら中にあるものを建ててどうするの」と手厳しい。伐採後に移植する案についても、「神宮の木は、神宮にあるから意味がある。もったいないと思うけどねぇ」。(武田啓亮)

神宮外苑の再開発計画

2028年 ラグビー場(Ⅰ期)

    事務所・商業ビル(高さ約190メートル)

 31年 野球場

    事務所・商業ビル(高さ約185メートル)

 34年 ラグビー場(Ⅱ期)

    文化交流施設

 35年 ホテル・スポーツ関連施設(高さ約80メートル)

 36年 テニス場…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません