「アベノマスクも史料」職員の家に眠っていた未使用品、資料館で展示

オミクロン株

米沢信義
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 江戸期からコロナ禍の現在に至る疫病対策の歴史を振り返る企画展「疫病と向き合う人びと」が、埼玉県八潮市立資料館で開かれている。現代のコーナーでは「アベノマスク」も史料として展示されている。

 新型コロナウイルスへの対策が日々続くなか「先人たちの足跡に光を当てよう」と、学芸員の柴田愛さんらが史料を集めた。

 はしかや疱瘡(ほうそう、天然痘)などの疫病にたびたび見舞われた江戸時代。人びとは病原体がわからず、まじないや祈禱(きとう)が頼りだった。稲わらを使って大きな蛇を作る「蛇ねじり」は、古くから今に伝わる疫病退散などを願った行事で、会場にはわら蛇の実物が展示されている。

 明治時代には「三日コロリ」と呼ばれたコレラの流行が脅威に。旧潮止村の記録では1889(明治22)年、病よけの祭礼で振る舞われた赤飯が原因で多くの感染者が出たとされている。翌年には家族に伝染しないよう、複数の寺院を隔離所として患者を治療した「隔離所届」も残っていて、感染者を非感染者から離す政策がすでに行われていたことがうかがえる。

 病気の原因が科学によって解明されるにつれて、人びとの間に「衛生」の意識が芽生えた。大正、昭和の展示品は、井戸水の検査結果や上下水道の整備計画など公衆衛生の整備に関わった人びとの記録が中心だ。

 最後のコーナーが、緊急事態宣言中のチラシなど42点を集めた「新型コロナウイルスと向き合う」。アベノマスクは資料館職員の自宅に眠っていた未使用品を持ち込み、そのまま展示した。「コロナ禍はまさに歴史的な出来事で、アベノマスクも史料の一つ。今後も史料収集を続けていく」と柴田さんは話す。

 3月13日まで。開館時間は午前9時~午後5時で入館無料。月曜と2月12日、24日は休館。問い合わせは八潮市立資料館(048・997・6666)。(米沢信義)

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    牧原出
    (東京大学先端科学技術研究センター教授)
    2022年2月10日13時12分 投稿
    【解説】

    2年を超えるコロナ禍ですが、この時代を表す「モノ」は多くはありません。同じ災害でも、地震や洪水などのようにインフラが壊れ、被害を可視化できる自然災害とは大きく異なります。海外でも、20世紀初めのスペイン風邪ではマスクの着用義務が大きな政治的

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