オオサンショウウオの保存活用指針を答申 文化財保護審

東孝司

 【鳥取】国の特別天然記念物のオオサンショウウオの保護を進めるため、県文化財保護審議会(会長=長谷川博史・島根大学教授)は9日、保存活用指針を平井伸治知事に答申した。諮問から8年をかけて課題を整理し、対策をまとめてきた。

 オオサンショウウオは2千万年以上前からほとんど姿を変えていない「生きた化石」。県内ではほぼ全域で個体の生息情報があり、中でも中部の天神川水系と西部の日野川水系が主な分布域だ。正確な個体数はわかっていないが、県文化財課によると「以前はいた川にいなくなった」という情報が多いという。

 全国的には外来種との交雑種も問題化している。県内ではまだ確認されていないが、隣県の岡山県で見つかっていて、対策が急がれる状況になっている。

 指針では「県が2024年度にかけて全域で生息調査を実施」「発見した個体へのマイクロチップの挿入」「保護団体の調査と行政調査の情報集約化」などの保護対策を列記。開発行為との調整では「人工巣穴や環境配慮型ブロックなどの設置が必要な河川を県があらかじめ明示」「工事は繁殖期を避ける」「河川工事以外でも濁水が発生する工事や森林皆伐が生態系に影響することをPR」といった対策を進めていく。

 外来種、交雑種、飼育個体の取り扱いについては専門家の意見を踏まえて別途マニュアルを作る。

 オオサンショウウオの生息が地域の誇りや活力につながるように地域学習やエコツアーを推進することも明文化した。同課の担当者は「保護のためには、こうした『活用』も大切」と話す。ただし、過剰な利用にならないよう実施機関や団体に注意事項を通知する。

 他県では三重県と奈良県が共同で「保護管理指針2012」を策定している。(東孝司)…

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