「憲法を知ることが改悪の歯止め」 全条文連続学習会 茂木町で

中村尚徳
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 改憲の動きが強まる今こそ、全条文を読み、学んでみませんか――。そんな呼びかけで始まった連続学習会が、栃木県茂木町で毎月開かれている。国民の権利を守る憲法の中身を知らなければ政治権力は監視・点検できないと、参加者は生活者の視点で読み進めている。

 1月30日、同町の文化施設「ふみの森もてぎ」に9人が集まった。教材は元大工の明良佐藤(あきよしさとう)さん(78)の著書「大工の明良、憲法を読む」。この日は28条(労働基本権)、29条(財産権)、30条(納税義務)を取り上げた。

 まず、条文と明良さんの条文ごとの解説を音読する。その後、各自の立場や体験から意見を出し合う。

 「労組の組織率のピークは施行2年後の約55%で、2019年に約17%まで下落」「中小企業の労組は少ない。大企業で非正規労働者は加入できない」「労働運動が低調だと権利意識も弱くなる。批判や対立を避けがちな風潮につながる」

 学習会は昨年1月から始まった。毎月の最終日曜に補則を除く99条までを原則3条ずつ。前文や9条は特に重要として重点的に取り上げた。毎回、同町を中心に農家や移住者ら様々な経歴を持つ60~80代の十数人が集まる。

 主催する「憲法を学ぶ会」代表の明良さんは、立ち上げの動機を説明する。

 「学校で学ぶ憲法は主要な柱だけ。試験を終え社会に出れば忘れてしまい、学ぶ機会がなかなかない。専門家や学者の議論では広がらない。主権者の私たちが自分で考え、自分のものにしなければ」

 教材の著書は2018年に出版した。改憲を重要課題に掲げた第2次安倍晋三政権発足を機に憲法を本格的に読み直した。本当に「押しつけ憲法」なのか。元首相が言うように「みっともない憲法」なのか。庶民の視点で制定過程などを調べた。

 明良さんによると、30条の「納税義務」は、連合国軍総司令部(GHQ)の原案になかった。明治憲法にある義務規定がないのはおかしい、と日本人の意見で盛り込まれた。

 明良さんは「欧米では税金を義務としてではなく、権利を実現するために納める。だから使われ方を監視する意識が強い。日本人はそうした姿勢が弱い。敗戦前の古い意識を引きずっている」と投げかけた。

 参加者からは「アベノマスクは無駄遣い」「改憲派はさらに憲法に義務規定を増やそうとしている」といった意見を出した。さらに源泉徴収制度、森友学園問題、情報公開制度などにも論議を広げていった。

 昨年6月、改憲の手続きを定める改正国民投票法が成立した。11月の衆議院選挙では「改憲勢力」政党が国会の改憲発議に必要な「3分の2以上」を保ち、全体の議席数も増やした。

 憲法施行から今年5月で75年。明良さんは「憲法を知ることが憲法改悪の歯止めにもなる。改憲論議や政治状況をにらみながら続けていきたい」と参加を呼びかけている。無料(カンパあり)。問い合わせは同会(080・3442・1976)。(中村尚徳)

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