「九州男児の実際、知りたい」 国内版ジェンダー格差指数作ってみた

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加藤裕則
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 政治や経済分野など国内のジェンダーギャップ(男女格差)を「見える化」する指数が発表された。全国を11の地域に分けたランキングでは、格差の小ささで沖縄がトップに。作ったのは九州経済連合会。経団連の九州版のような組織で、会長副会長14人は全員男性だ。「九州男児」という言葉もあるほど男性優位の地域だからこそ、足元の格差を見つめてみようと考えたという。

 例年、国別のジェンダーギャップランキングを発表している世界経済フォーラムと同様に、経済、教育、健康、政治の4分野に着目し、「理系学部生の男女比」など独自の項目も加えて、計15項目のデータ(2020年までの最新)を用いた。全国を11の地域に分けて、それぞれの指数と順位を出した。

 指数は、1に近いほど男女格差が小さい状態を示す。ただ格差が小さく順位が高くても、男女ともに水準が低いケースもある。

「政治」は100点満点に換算するとわずか5点

 4分野を総合した1位は沖縄(0・659)で、最下位は北海道(0・627)だった。東京を含む南関東は2位、近畿は6位、東海は10位だった。

 4分野別の全国の指数は、健康(0・963)が最も高く、教育(0・870)、経済(0・693)と続き、政治(0・055)が最も低かった。100点満点に換算すると、わずか5点程度にとどまる。

 特に顕著なのが「自治体首長の男女比」で、11の地域で0・000(北海道)~0・038(南関東)と低迷。「公務員の部長局長以上職種の男女比」も0・1以上は沖縄(0・142)だけだった。「管理的職業従事者の男女比」も振るわない。最も高い東北、北関東・甲信でも0・200だった。九経連によると、指数の算出に労働力調査を用いており、人数が1万人未満の地域は指数を出せず「0・000」とした。

 地域差が目立つのは「自治体議員の男女比」で、南関東(0・309)に対して、最下位は沖縄(0・111)だった。「専門的技術職のうち、給与が平均より高い職業の男女比」も、最も高い沖縄(0・443)と最下位の東海(0・296)で開きがあった。

会長も副会長13人もみんな男性

 今回、経済団体が男女格差の問題を取り上げたのはなぜなのか。

 「『九州男児』という言葉に代表されるように男女格差が大きいと思われているが、実際はどうなのか数値化してみるべきだとの意見があった」。指数をとりまとめたグループのリーダー、JR九州人事部担当部長の原槙義之さんはいう。

 実際、九経連(加盟企業約1千社)の組織も、倉富純男会長(西日本鉄道会長)と副会長13人が全員男性。組織内の格差是正が進んでいるとは言いがたい。

 今回の指数で、九州は全国で9位と下位だった。経済分野は3位で男女格差は比較的小さいが、10位の政治分野が全体を押し下げた。原槙さんは「9位でみんなの予想通りでした」と苦笑しながらも、「施策を考える材料にしたい。ここからが本当のスタートです」。

 「財界総本山」と言われる経団連も「女性の活躍推進」の旗を振るが、会長副会長職に長らく女性はゼロだった。昨年6月、ディー・エヌ・エー(DeNA)会長の南場智子氏が女性で初めて副会長に就いたばかりだ。

 九経連によると、商工会議所など経済団体の役員(幹事や理事も含む)の男女比は、最も高い近畿(9・5%)でも女性は1割に満たず、最下位の北関東・甲信(1・8%)はほとんど女性がいない状況だ。特に会長副会長職は企業のトップが就くことが多く、男性ばかりになりやすい。

■「2030年までに女性役員…

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    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2022年1月25日6時49分 投稿
    【視点】

    世界経済フォーラムが発表する、各国の男女格差の状況を数値化したジェンダーギャップ指数は、女性が政治および経済での活躍が限定的であることを具体的な数値化(総合スコアは0.656)と世界ランク(156カ国中120位)で示すことで、特に女性の議員

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