もうできてるやないか! 米朝さんが怒った「じごくのそうべえ」

有料記事きみが生まれた日

聞き手・松本紗知
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 とざい、とうざい――。軽業師のそうべえと、山伏のふっかい、歯ぬき師のしかい、医者のちくあんの4人がくり広げる、地獄の珍道中を描いた絵本「じごくのそうべえ」。人間国宝落語家桂米朝さんが復活させた落語「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」がもとになっていますが、作者の田島征彦さんが最初に米朝さんに絵本の見本を見せたとき、米朝さんは「すごい剣幕」だったそう。「そうべえ」の誕生秘話を田島さんに聞きました。

「じごくのそうべえ」(童心社、1978年、累計86万部)

 綱渡り中に綱から落ちた軽業師のそうべえは、山伏のふっかい、歯ぬき師のしかい、医者のちくあんと、三途(さんず)の川を渡って地獄のえんま大王の元へ。糞尿地獄や熱湯の釜に投げ込まれ、人を食べる人呑鬼(じんどんき)にのみ込まれながら、4人が大騒動を巻き起こす。「そうべえごくらくへゆく」など、シリーズは現在6作。

 「地獄の絵本を作らんか?」と誘われたのがきっかけでした。編集者が集めてきてくれた民話などの資料の中に、後に人間国宝になる落語家、桂米朝師匠が復活させた「地獄八景亡者戯」に似た話がありました。

 早速落語のレコードを買ってきてテープに録音して、何カ月もの間、何回も聴きました。ずーっと聴いているから、すぐにテープが切れてしまう。そのたびに、レコードプレーヤーを持っている大家さんのところに行って、新しく録音させてもらいました。そうして、この落語を絵本にしようと決めました。

「君の名は永遠に残る」 編集者に演説

 落語は話術で人を笑わせますが、絵本は絵と文で感動や笑いを伝えるもの。落語をそのまま絵本にするのではなく、落語を聴いて浮かんだイメージを絵にしていきました。

 軽業師のそうべえを主人公にしたのは、そうべえが綱渡りをして、ばーっと視界が開けた場面から始めるのがいいと考えたからです。この綱渡りや、火の車、糞尿(ふんにょう)地獄は、落語にはない場面ですが、僕が考えて絵本に入れました。

 話の最後は、落語は便秘薬の「大黄(だいおう)」と閻魔(えんま)大王をかけて「(鬼の腹の中から4人を追い出すために)大王を飲んで下してしまう」で終わりますが、絵本はそうべえたちが地獄から放り出されて生き返る。よく覚えてないですが、みんなが笑ってホッとできる終わり方がええな、と思ったんでしょうね。

 笑いながら絵を描きました…

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