第10回346人の命奪った737MAX、再び空へ 封印された事故の責任

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 尾翼に星条旗をあしらったアメリカン航空機が、米ニューヨーク・ラガーディア空港のD1ゲートに近づいてきた。燃費を良くするため主翼の先端が二つに枝分かれした、特徴的な機体。2度の墜落事故で計346人の命を奪って以来、世界で運航が止められていた米ボーイングの小型機737MAXだ。

 事故以来1年10カ月ぶりに乗客を乗せ始めた737MAXに2021年初め、私も搭乗した。米国でコロナ感染が深刻化してはいたが、ニューヨークからフロリダ州マイアミに向かうAA718便の機内は、マスク姿の乗客でほぼ満員だった。搭乗前に5人ほどの乗客に話しかけたが、これから乗る飛行機が連続墜落事故を起こした737MAXだと知る人は、一人もいなかった。簡単にいきさつを説明すると、「過去に事故を起こしているなら、その分安全に気を配っているはずで、むしろ安心だ」という男性もいた。

 ボーイングは当初、事故から「数週間」で運航再開できると踏んでいた。事故につながった飛行制御システムを改修し、パイロット向けの訓練を新たに導入するなどの対策もとった。

 それでも、実際に米連邦航空局(FAA)が運航停止を解除したのは事故から1年8カ月後。事故によりFAAはボーイングとの癒着を強く疑われただけに、今回ばかりは審査に時間がかかった。

 審査にあたりFAAは、欧州連合(EU)の航空当局などの意見も聴き、透明性に配慮する姿勢を見せた。FAAが20年11月に737MAXの運航停止処分を解除すると、EUなども追随。日本の国土交通省も21年1月に再運航申請を受け付け始めた。

 ただ、日本の航空会社はもともと737MAXを運航していない。コロナ禍による航空需要の低迷もあり、事故前に日本の空港に乗り入れていたアジアの航空会社からも22年1月時点で申請はないという。

 事故後、世界に先駆けて737MAXの運航停止に踏み切った中国も、近く運航再開を認めるとの報道がある。これにより、ほぼすべての主要市場に737MAXが戻ってくることになる。19年から3年連続の赤字決算に陥ったボーイングにとっては、再起への大きな節目となる。

構造の不安定さ、コンピューター制御で抑え込む

 世界の空に復帰した737MAXは、本当に安全なのか。

 「やれることはすべてやった…

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