のび太たちも困惑した「きれいなジャイアン」 人気フォトスポットに
「きれいなジャイアン」。「ドラえもん」36巻に登場するそれは「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」にいた。
正直を美徳とするイソップの寓話(ぐうわ)「金の斧(おの)」が下敷きのお話。ひみつ道具「きこりの泉」に物を投げ入れると、いい物になって返ってくると知り、ジャイアンが古いおもちゃを投げ入れるが、その際に誤って泉に落ちてしまう。のび太たちは泉から出てきた女神に、「(落としたのは)これですか?」ときれいなジャイアンを示され、困惑する。
ミュージアムの屋外に設置されたレバーを手動で上下させると、泉の中から現れるのは男前のジャイアン!館内で人気のフォトスポットだという。
ミュージアムは漫画家の藤子・F・不二雄氏(1933~96)の自宅があった神奈川県川崎市多摩区に2011年に開館した。「ドラえもん」「新オバケのQ太郎」「パーマン」「キテレツ大百科」など約5万点の原画を保管し、二つの展示室で約280点を入れ替えながら展示している。
「保存状態がよく、カラー原画の水彩が鮮やかに残っているのが見どころの一つ」と同ミュージアム学芸部の小林順子部長。藤子氏が落語やクラシックを聴きながら漫画を描いた仕事場を再現し、約1万冊の蔵書が並び、鉄道模型が走る書棚も設置した。豊かな発想の一端が見え、興味深い。
2階の「みんなの広場」にはのび太が暮らす野比家の5分の1の模型があり、付属のタブレットのカメラを部屋の中に向けると、あら不思議、野比家の人々が出現する。3階の屋上庭園「はらっぱ」には、おなじみの土管や「どこでもドア」が置かれ、漫画のコマに入ったかのようだ。
併設のカフェでは、かけ算の問題が書かれた「フレンチトースト de アンキパン」などオリジナルメニューが楽しめる。これを食べれば、小テストもばっちりかな?
コロナ以前は中国、台湾、タイ、ベトナムなど、ドラえもんの漫画出版やアニメ放映地からの訪問も多かった。小林さんは「ドラえもんの人気は国境を越えます」。
ところで「きれいなジャイアン」だけど、男の子2人を育て、現実を知る記者には二枚目すぎて近寄りがたい。やっぱり、剛腕でお調子者の、いつものジャイアンがいいなあ。
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〈川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム〉(0570・055・245)=JR南武線、小田急線登戸駅から市バス直行便。午前10時~午後6時、火曜休み。1月24~28日は展示替えのため休館。大人・大学生1千円、中・高生700円、子ども(4歳以上)500円。チケットは完全予約制で、全国のローソンで販売。