人類史上、馬の家畜化とそのコントロールは革命的発明だった。文明を前進させ、世界にまたがる巨大帝国を出現させた。その起源はどこで、どのように発展してきたのか。京都大学人文科学研究所主催のシンポジウムで、第一線の研究者が意見を交わした。
牛、豚、羊……家畜のメリットは食料や労働力などいろいろあるけれど、馬ならばまず軍事利用だろう。その機動力は戦術を大転換させ、国々の版図は飛躍的に拡大した。馬は長らく最強の武器、まさに「生きた兵器」であった。
なかでも馬を乗り物として自在に操り、世界を席巻したのが遊牧騎馬民族だ。紀元前の黒海北岸ではスキタイが活躍し、匈奴(きょうど)や突厥(とっけつ)は常に中国歴代王朝の脅威だった。チンギス・ハーン率いるモンゴル勢力は瞬く間にユーラシア大陸に覇を打ち立てた。
「人類は馬の家畜化で高速移動を手に入れた」。埼玉大の中村大介准教授は、昨年11月オンラインで開かれた「考古学からみた古代東アジアの馬利用」で、こう切り出した。
中村さんによると、図像など…