大阪ビル放火殺人、容疑者の男が死亡 事件の解明困難になる恐れ

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 大阪市北区の雑居ビル内のクリニックで17日に発生し、25人が死亡した放火殺人事件で、住所、職業不詳の谷本盛雄容疑者(61)が30日夜、市内の病院で死亡した。大阪府警が明らかにした。谷本容疑者は事件後に心肺停止状態で救急搬送されて治療を受けたが、重度の一酸化炭素中毒などで意識不明になっていた。

 府警は31日に司法解剖し、死因を調べる予定。

 死亡により、刑事責任の追及はできなくなった。府警による事情聴取は実現せず、事件の解明が困難になる恐れがある。府警は今後、客観的な証拠を積み上げ、容疑者死亡のまま書類送検する方針だ。

 府警によると、谷本容疑者は17日午前10時18分ごろ、大阪市北区の「堂島北ビル」に放火し、数十人を殺害した殺人と現住建造物等放火の疑いがある。事件では4階のクリニックにいた西沢弘太郎院長らスタッフと患者、谷本容疑者自身の計27人が心肺停止状態で搬送された。女性1人が今も意識不明状態にある。

 府警によると、谷本容疑者は事件の1カ月ほど前からビルの約3・5キロ西にある3階建て住宅に滞在。事件の約3週間前、近くのガソリンスタンドでガソリン約10リットルを購入していた。

 事件後にこの住宅を家宅捜索し、2019年の「京都アニメーション」放火殺人事件など複数の放火事件に関する新聞記事や、「消火栓」「放火殺人」などと記した手書きのメモを発見、押収した。

 クリニックの消火栓扉や非常扉には動きにくくする工作がされており、事件前に谷本容疑者が関与した疑いがある。府警は谷本容疑者が周到に準備し、多くの人を巻き込んで自殺しようと放火に及んだとみて調べていた。

 谷本容疑者の容体が重篤だったことなどから、府警は逮捕状を請求していなかったが、19日未明に谷本容疑者の名前を公表。「被害者、ご遺族が被疑者の早期特定を望んでいる。事案の重大性に鑑みた」と異例の対応の理由を説明した。

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