22年度当初予算、防衛費が過去最大に 補正込みでは初の6兆円台

松山尚幹
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 政府が24日に閣議決定した2022年度当初予算案で、防衛費デジタル庁の予算に計上される318億円を含む)は前年度比583億円増の5兆4005億円となり、過去最大を更新した。10年連続の増加だ。さきの臨時国会で成立した21年度補正予算7738億円と合わせると6兆1744億円で初めて6兆円の大台にのった。防衛省は来年行う安全保障政策の見直しを見据え、今回の予算を今後の防衛費増額に向けた布石としたい考えだ。

 防衛省は、中国の軍事力拡大などを意識し、「防衛力強化加速パッケージ」と題し、今年度補正予算と来年度予算案を一体化した「16カ月予算」を編成、防衛費を大幅に増額させた。

 合計額は、対国内総生産(GDP)比で1・09%になる。当初予算の防衛費はこれまで対GDPでほぼ1%以内に抑えられてきたが、自民党高市早苗政調会長が9月の総裁選で「欧米並みにするなら2%」と発言。10月の衆院選公約にも「GDP比2%以上も念頭に増額を目指す」と盛り込まれた。

 このため、防衛省は補正予算を最大限に利用した。防衛省によると当初予算と同時期に編成される補正予算に防衛費が本格的に組み込まれるようになったのは、第2次安倍政権が発足した12年末以降だ。複数年契約の装備品の支払いを前倒しする形で積み増してきた。

 ところが岸田政権では、新規の主要装備品の購入費まで計上するという異例な手段をとった。このため補正の防衛費は、過去最大を3千億円以上も上回る7738億円になった。

 岸田政権は来年末までに、5年間に取得する自衛隊の装備や予算を定める中期防衛力整備計画中期防)を見直す方針だ。

 いまの中期防は23年度までが対象で、増額する際の歯止めになっていた。防衛省は今回の補正と当初予算案を合計した6兆円超の規模をベースに見直しの議論を進め、さらなる防衛費増額につなげることを狙う。

研究開発費増額、敵基地攻撃に転用可能な装備も

 今回の予算案の特色は、研究開発費が2911億円(契約ベース、以下同)で、前年度に比べて約800億円も多く増えたことだ。中には岸田政権が保有を検討する敵基地攻撃能力に転用が可能な装備品も含まれている。

 その一つが、敵の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」だ。

 この名目で長射程化する方針を決めている国産ミサイル「12式地対艦誘導弾」の能力を向上させる開発に関し、すでに21年度に計上されている地上発射型に加え、新たに航空機や艦船から発射するための開発費も盛り込まれ、合計で393億円となった。

 関係者によると射程は1千キロ程度で、地上発射型は25年度、艦船発射型は26年度、航空機発射型は28年度の開発完了を目指す。戦闘機や護衛艦からも発射できるようにすることで、「敵基地攻撃能力」に転用できる可能性がさらに高まる。

 岸田文雄首相は臨時国会での所信表明演説で「敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討」する考えを示した。能力保有の議論が本格化するのはこれからだが、転用可能なミサイル開発は着々と進むことになる。

 研究開発費では、航空自衛隊のF2戦闘機の後継となる次期戦闘機の開発に858億円が計上された。極超音速誘導弾などに使うレーダーの識別能力向上の研究費にも40億円が盛り込まれ、最先端技術への投資を強化している。

 米軍再編関係経費も5590億円となり、前年から倍増近い伸びを見せた。鹿児島県馬毛島への米軍訓練移転と自衛隊基地整備計画で滑走路整備などの費用として3183億円計上され、全体を押し上げた。

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この記事を書いた人
松山尚幹
国際報道部
専門・関心分野
外交・安全保障、政局と政策、財政税制