現代に「発見」された監督・田中絹代、内外で上映 女性映画人に脚光
佐藤美鈴 編集委員・石飛徳樹
スター俳優として映画史に名を残す田中絹代(1909~77)が今、監督として内外で評価を受けている。今年、カンヌ国際映画祭や東京国際映画祭などで相次いで監督作の修復版が上映された。現代の人々をひきつけるその魅力とは。
「女性がなかなか監督できなかった時代に6本も、しかもテーマも現代的で衝撃を受けた」「なぜ今まで話題になっていなかったのか。監督・田中絹代の偉大さを発見した」。11月、東京国際で開かれたイベントに登壇したカンヌ映画祭のクリスチャン・ジュンヌ代表補佐はそう語った。
10月に仏リヨンで開かれたリュミエール映画祭でも田中作品の上映は「毎回長蛇の列で満員御礼だった」と映画ジャーナリストの林瑞絵さん。「堂に入った演出ぶり、根底に流れる人間味、ジャンルの多様さに、専門家からは、ジャン・ルノワールやジョン・フォードら巨匠監督と重ね合わせる声もあがっていました」
田中は「マダムと女房」「愛染かつら」「西鶴一代女」などに出演した、戦前から活躍するトップスター。戦後、日本で2人目の女性監督としてメガホンをとり、1953~62年に計6作を世に送り出した。
「女性のセクシュアリティーを繊細に」
だが監督としては従来、決し…