アベノマスク含む在庫 「処分に33年以上のペース」指摘に首相は
「世紀の愚策のツケをどのように払うつもりか」。新型コロナウイルス対策として政府が調達した「アベノマスク」を含む約8千万枚の布マスクが在庫として残り続けている問題で21日、参院本会議で論戦が展開された。岸田文雄首相は従来の政府対応をなぞるような答弁にとどめた。
立憲民主党の杉尾秀哉氏は、布マスク配布事業について「『全国民に布マスクを配れば不安はパッと消えます』。安倍晋三元首相の側近官僚による、こんな助言で始まったとされる」と指摘。大量の在庫となった布マスクの保管費について「これまでに少なくとも6億円以上を要する状況が続いている」とした上で、「布マスクの今後の使途を含め、世紀の愚策のツケをどのように払うつもりか」とただした。
松野博一官房長官は15日、希望する自治体や個人に配る方針を示しているが、杉尾氏は「私はこうした希望を寡聞にして聞いたことがない。自治体に押しつけないで下さい」と迫った。
これに対して岸田首相は「介護施設への随時配布をはじめ、費用対効果の観点から適切な方策を検討していきたい」と返すのみで、自治体や個人への配布計画には言及しなかった。
国民民主党の川合孝典氏も、「在庫は月平均で約20万枚しか減っていない。このままのペースだと、在庫処分に要する期間は33年以上かかる計算となる」とした上で、「これ以上の税金の無駄遣いを止めるため、売り払い、譲与、資源リサイクルも考慮に入れた対応を速やかに検討する必要がある」とただした。
岸田首相は自治体への配布方針に触れつつ、同様の答弁を繰り返した。「新型コロナの実態が分からず、先が見通せない中、マスクが入手困難となっていた状況で緊急的に実施をしたもの」とも語った。
布マスクは昨年4月、当時の安倍晋三首相が全世帯に配布すると表明し、アベノマスクと呼ばれた。別に配布した介護施設向けなどと合わせて、国は計約2億9千万枚を調達した。
マスクの品薄状態が解消された後も介護施設への一律配布を続けようとしたことが批判され、昨年7月末に希望施設への配布に転換。今年3月末時点で3割近い8272万枚が倉庫に残る状態となった。
昨年8月~今年3月の保管費用は約6億円。配布を担う日本郵便に当初は保管を委託したが、昨年10月、経費節減のため一般競争入札で落札した佐川急便と契約。佐川急便の倉庫への移送費のほか、段ボール箱に詰め替えたり、ラベルを貼り替えたりといった費用もかかった。
今年度は日本通運に委託。ここでも移送費がかかり、年間の保管費は3億円を超える見通しとなっている…
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