密過ぎ?の仏像1千体超 タッチで名前と顔一致 京都・三十三間堂
千手観音など1千体以上の仏像が所狭しと並ぶ、国宝・三十三間堂(京都市東山区)。多くの参拝者が圧巻の光景に感動しつつも心に抱いてきたとされる「後ろの方の仏像がよく見えへん」という問題が今秋、大きく改善された。ある工夫で、一体一体の仏像をより間近で観られるようになったのだ。
三十三間堂は平安時代の1164年に建立され、火災を経て今の建物が1266年に再建された。幅約120メートルの細長い堂内には、中央の千手観音坐(ざ)像を挟むように、1001体の千手観音立像や風神・雷神像など、計1032体の仏像が置かれている。
仏像を多く作るほど、たくさんの功徳や慈悲が与えられるという考え方が建立当時に流行していたため、こんなに多く作られたと考えられている。
後ろの方の仏像「見えへん」
ただ、すべての仏像を拝むのは難しい。黄金色に輝く1001体の千手観音立像は、それぞれが頭部に11の顔をつけ、「光背」と呼ばれる装飾も施され、両脇には計40本の腕。これらが前後10体ずつ100列も並ぶさまは見応え抜群だが、結果として後方の仏像がほぼ見えないのだ。
埼玉県から観光で訪れた主婦の林裕子さん(59)は「合唱コンクールで学生が舞台に並んでるみたいで、わが子を探す親の気持ちになる。奥の方のお顔は見えなかったけど、前方の像はそれぞれ顔が違った」と話した。
千手観音立像には「第1号尊」といった具合に1から1001まで番号が振られ、それぞれ名前も持っている。2018年にはセットで国宝にも指定された。だが、「密」過ぎる配置もあってか、大半の参拝者は個々の仏像に関心が及ばない。「もっと知ってほしい」。それが三十三間堂の僧らの悩みだった。
「卒業アルバム」も決定打にならず
18年には、千手観音立像の顔写真と名前を一覧にした冊子「無畏(むい)」(1500円)を発行した。SNSで「まるで卒業アルバムだ」と話題になり、「みんな緊張して仏頂面」などのコメントが寄せられた。ただ、顔写真と名前以外にめぼしい情報が載っておらず、PRの決定打とはなっていなかった。
そこで新たに導入されたのが、仏像群の裏手に設置されたタッチパネル式の検索システムだ。画面の配置図から気になる1体を選ぶと、その仏像の上半身や全身の写真、名前の由来の説明を見たり読んだりできる。1973年以降に実施してきた仏像修理の際、記録用に撮りためた写真を活用した。
例えば、仏像群に向かって左端で、一番後ろの第1号尊「第一尊(だいいちそん)」はふっくらしたほおが特徴。「はじめ・最初」を表す。向かって左側の真ん中あたりの前から7番目にたたずみ、比較的小顔な第334号尊「無事尊(ぶじそん)」は「『相変わらず』な日常にまさる貴さはない」と伝える。
「目の開き具合や、まゆげの位置など、一体一体お顔が違う」と担当者。本坊である天台宗妙法院の杉谷(すぎたに)義純(ぎじゅん)門主は「(像の)違いを見てもらい、それぞれの観音様に親しみを持ってもらいたい」と話している。
そもそも、なぜ一体一体の「顔」が違うのだろう。
三十三間堂によると、当時一…