国家安保戦略など改定へ、自民が議論開始 「敵基地攻撃能力」が焦点
自民党は20日、国の外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略(NSS)」をはじめとする安保関連3文書の改定に向けた議論を始めた。岸田政権が3文書の改定を明言したことを受けたもので、来年5月中に政府へ提言する方針。改定をめぐっては、敵のミサイル拠点などを直接たたく「敵基地攻撃能力」の保有が最大の焦点だ。
NSSは第2次安倍政権下の2013年に策定され、初めて改定する。他の2文書は「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と「中期防衛力整備計画(中期防)」。防衛大綱は10年程度の防衛力のあり方などを定めたもの。18年に策定した現大綱では、宇宙、サイバー、電磁波など新しい領域を融合した「多次元統合防衛力」の構築を打ち出した。中期防は5年間の防衛費の上限や主要装備品の数量を定めている。
政府は3文書の改定にあたり、経済安全保障の概念を追加するほか、防衛費の増額を目指す方針。敵基地攻撃能力の保有については、岸田文雄首相が今月の所信表明演説で「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討」すると明言したことから、最大の焦点となっている。
政府はこれまで攻撃を防ぐのに他に手段がない場合に限り、ミサイル基地をたたくことは法理的には自衛の範囲内としてきたが、政策判断として実現のための装備は保有してこなかった。仮に保有が決まれば、日本の安保政策の大きな転換となる。
自民党は敵基地攻撃能力の保有を訴えており、今後の党内議論も政府を後押しする方向に進むとみられる。ただ、世論に慎重論が根強いことから、「敵基地攻撃能力」との表現の変更を模索する動きがある。20日の党安全保障調査会などの合同会議では、「色んな印象を与える。政府にはしっかりワーディング(言葉遣い)は慎重に考えてほしい」との意見が出た。(松山尚幹)