米国で、特定政党に有利な選挙区割り「ゲリマンダー」が横行している。今年は10年に1度の区割り変更の年にあたる。さらに、連邦議会で民主党と共和党の議席数が伯仲する状況も加わり、両党は来年11月の中間選挙を見据え、自分たちに有利な区割りづくりに熱を入れている。各地で市民団体が監視をしているが、問題視されながらも長年続く慣習は、終わる気配がない。
「政治家ではなく、私たちのための区割りを!」
12月8日、メリーランド州アナポリスの州議会議事堂前に集まった人たちが声を上げた。人々が是正を求めたのは、政治家が自分たちに有利になるよう議会選挙区の線引きをする「ゲリマンダー」だ。19世紀初頭のマサチューセッツ州知事ゲリーが線引きをした選挙区が、トカゲのような怪物サラマンダーに似ていたことに由来する。
集会に参加したジャスティン・ガラルドさんは、投票を呼びかけるボランティア活動をした経験から「政治家が都合よく区割りを決めるべきではない。選挙区が入り組んでわかりにくく、自分の選挙区を知らない人もいる」と話した。
米国の議会選挙は、上院は州全体を選挙区とし、各州から2人が選ばれる。一方、下院の議席は州の人口に基づいて配分される。下院と州議会の選挙区割りは、10年に1度実施される国勢調査をもとに、各州が見直す。今年はその年で、区割り作業が大詰めを迎えている。
メリーランド州は、露骨なゲリマンダーが長年問題になってきた州の一つだ。新たな下院選挙区の区割りもこれまでと同じく、複雑な形の選挙区が入り組んでいる。区割り案を作成した州議会は、民主党が多数派を占める。
区割りを担当した議会の諮問委員会は声明で、「よりわかりやすく改善された区割りだ」と強調する。しかし、プリンストン大学の研究者が運営する「プリンストン・ゲリマンダリング・プロジェクト」は、メリーランド州の新たな区割りを「著しく民主党に有利だ」として最低ランクの「F」に評価した。
集会を企画した団体「リーグ・オブ・ウーマン・ボーターズ」メリーランド支部のナンシー・ソーレン共同代表は「議会の区割り案が民主党の議席を増やす狙いなのは明らかだ。私たちは完全な独立委員会に区割りを委ねるべきだと訴えてきた」と話す。
ゲリマンダーは米国で長年問…