統計書き換え、続けた理由「隠蔽ではない」と首相 GDPへの影響は

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岡戸佑樹 柴田秀並 古賀大己 高木真也 浦野直樹

 国の基幹統計のデータ書き換え問題をめぐり、国会では16日も論戦が交わされた。政府は、書き換え作業を国土交通省本省が行っていたことを認めたうえで、「一時的に必要な作業」だったと釈明。GDP(国内総生産)への影響は「軽微と考えている」とした。

 政府は16日、2020年1月以降に国交省の本省職員が「建設工事受注動態統計」のデータを書き換えていたことを認めたうえで、並行して適切な集計方法も行っていたと主張した。斉藤鉄夫・国土交通相が参院予算委員会で「二つの方法が併存していたということになる」と説明した。

 斉藤氏は二つの方法を「改善された方法」と「従来の方法」と表現した。従来の方法とは、国交省本省の職員が、無断で書き換えたデータで統計を集計する方法だ。この日、朝日新聞の報道で明らかになった本省職員による書き換え行為について、「決して正当化しているわけではない」としながら、「一時的に必要な作業は国交省において行わざるを得なかった」と釈明した。

 理由に挙げたのは「統計の連続性」。業者から提出された受注実績データの書き換えをやめた場合、その前後で統計の前提が異なることになる。斉藤氏は「対前年度の比較というのは統計の非常に大きな要素となる」と主張、「二つの方法が併存したというのは統計上意味がある」と釈明した。

学者「統計学上、論外」

 これに対し、立憲民主党の木戸口英司氏は「間違った統計同士を比較する理由がわからない。これまでの統計を正当化するため大きく激変させないようごまかすためでは」と批判した。岸田文雄首相は「正当化させるためとか、隠蔽(いんぺい)させるためにこれをやったのではない」と述べた。

 政府の主張について、静岡大学の上藤(うわふじ)一郎教授(経済統計学)は朝日新聞の取材に「統計は正しいデータをもとにするのが大前提で、間違った数字で比較すること自体が統計学上、論外」と指摘し、「データが実態と違うことを把握しながら是正せず放置していたことは問題だ」と話した。

 政府はこの日の予算委で、同省の本省職員が書き換え作業を行った20年1月~21年3月の同統計については、「適切な数字も出していた」(国交省の高田陽介・政策立案総括審議官)と主張、斉藤氏も「20年1月から改善された方法で行った」と釈明した。

 ただ、改善された方法での集計は、国交省の内部で行っていただけで、対外的に初めて公表されたのは今年6月だった。同省建設経済統計調査室によると、それまでは書き換えたデータを基に集計した統計だけを問題のないものとして公表していたという。

データ書き換えによるGDPへの影響は

 建設工事受注動態統計は、国…

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この記事を書いた人
浦野直樹
ネットワーク報道本部次長
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