地域のコミュニティーバス、都内でも廃止や減便 コロナ禍で乗客激減

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本多由佳
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 地域の高齢者らの足となるコミュニティーバス(コミバス)が、コロナ禍で運行に苦慮している。自治体から補助金を受けずに民間が自主運行しているバスは、廃止や減便となるケースも出てきた。補助金が出ても乗客減で運賃収入が減り、自治体の財政負担が増えている。

コミバス、廃止の申し出

 「起立少数と認めます。陳情は不採択と決定いたしました」。10日の東京都荒川区議会本会議。来年3月に廃止方針のコミバス「町屋さくら」の継続を求める陳情が、審査の結果、不採択となった。

 議会を傍聴した同区町屋5丁目の及川久男さん(73)は「家の近くにバス停があるから気軽に外出できた。近所のお年寄りもみな継続してほしいと言っていた」と肩を落とした。

 町屋さくらは区内三つ目のコミバスとして、京成バス(千葉県市川市)が2012年に運行を始めた。現在は往復約6キロの経路を1日21本運行し、日暮里・舎人ライナー熊野前駅と、都電や東京メトロが通る町屋駅などをつなぐ。

 ところが、同社は今年6月、今年度末での廃止を区に申し出た。背景にはコロナ禍による事業の悪化があるという。

 区によると、乗車人数は1日平均900人を想定していたが、最も多かった18年度でも同615人で、外出自粛などが呼びかけられた今年度は8月末時点で同283人に落ち込んだ。

 町屋さくらの運賃収入はコロナ禍前から経費の3割程度で、区の試算では年間約2千万円の赤字だったという。同社は成田空港を発着する高速バス事業などの黒字分でカバーしてきたが、今年度は同事業も不振で、廃止を決めた。

 区は05年にコミバスを導入した当初から、事業者に対し、運行経費は支援していない。同社から数回補助を求められたが、方針は変えなかった。

 区によると、東京23区でコミバス(乗り合いタクシーなどを含む)を運行する19区のうち、運行経費を補助していないのは荒川、足立、新宿、世田谷の各区だという。荒川区の担当者は「区内は高低差もなく、400メートル程度歩けば駅やバス停に着く。町屋さくらだけ補助すると他のルートにも補助して、という話になる」と説明した。

 同社から廃止の申し出を受けた区は、運行を引き継ぐ事業者を探したが、補助なしで引き受ける事業者は見つからなかったという。代わりの交通手段について、区は「何らかの検討を行う」としている。

「黒字にはならないのが普通」

 コミバスへの影響は他自治体…

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