留守電に現金のお礼 日大前理事長の妻「たくさん頂いて」 脱税事件
日本大学前理事長の田中英寿容疑者(75)が脱税容疑で逮捕された事件で、前理事長の妻が医療法人「錦秀会(きんしゅうかい)」前理事長・籔本雅巳被告(61)=背任罪で起訴=に現金提供のお礼を伝えたとみられる留守番電話のメッセージが残っていたことが、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は、現金授受を裏づける重要な客観証拠とみている。
田中前理事長は妻と共謀し、2018年と20年に取引業者らから受け取ったリベート収入など計1億1840万円を税務申告せず、計約5328万円を脱税したとして、所得税法違反容疑で逮捕された。
「主人も喜んでいる」
関係者によると、隠し所得とされた1億1840万円のうち、籔本被告からの現金提供は4回で計7500万円。田中夫妻が参加した食事会で現金と酒が入った紙袋を渡すなどしていたという。
現金の一部を受け取った田中前理事長の妻は後日、籔本被告の携帯に電話し、留守電サービスに「紙袋の中を見たらたくさん頂いていて、ありがとう」などという趣旨のお礼のメッセージを残していた。「主人(田中前理事長)も喜んでいる」などという趣旨の発言もあったという。
特捜部は籔本被告の携帯を押収し、複数のメッセージを確認。籔本被告が秘書に出金を指示したLINEや銀行の出金記録などと併せ、授受を裏づける客観証拠とみている。
メッセージ聞いた前理事長、「全責任は自分が…」
11月29日に逮捕された田中前理事長は現金受領を否定し、「税務申告は妻に任せており、税理士とも会ったことがない」と容疑を否認してきた。一方、妻の現金受領を示すような留守電メッセージを取り調べで聞かされ、「妻が共謀で起訴されるようなことは避けなければならない。それなら自分が全責任を負う」と供述し始めた。現時点では自らの現金受領は否定したままで、妻の受領も知らないと説明しているという。
妻は体調不良で入院中で、特捜部は事情聴取が可能か慎重に検討している…