タリバン、元警察官ら100人超を殺害・失踪か 人権団体が報告

アフガニスタン情勢

ワシントン=高野遼
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 アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが権力を掌握した8月以降、100人を超える元警察官らが殺害、または強制的に連れ去られたとする報告を国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)がまとめた。日米や欧州各国など22カ国・地域は4日、この報告について「深い懸念を抱いている」とする共同声明を発表した。

 報告は11月30日にHRWが発表した。8月15日以降に、ガズニやヘルマンドなど4州を中心としてタリバンによる100人超の殺害・失踪の事例があったことを、聞き取り調査を通じて確認したという。

 報告によると、降伏したアフガン治安部隊のメンバーが恩赦のために登録を済ませると、タリバンはその情報を利用して即座に殺害を図っていた。また、タリバンは前政権が残した雇用記録を使い、逮捕や処刑対象となる人々を特定。夜間襲撃などを含む捜索活動を重ね、対象者の行方を知るために家族を脅迫・虐待することもあったという。

 HRWは「タリバン指導部が約束した恩赦は、地域の司令官らによる処刑などを止めることができていない」と指摘。HRWに対してタリバンは「虐待をした職員を解任した」と回答したが、証拠は示されていないという。

 各国による共同声明は、報告された内容について「深刻な人権侵害にあたる」と強調。タリバンが対立勢力などに「恩赦」を与えるとした従来の方針と矛盾すると指摘した。そのうえで「報告された事例は迅速に透明性をもって調査し、責任を追及される必要がある」と訴えた。(ワシントン=高野遼)

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    佐藤優
    (作家・元外務省主任分析官)
    2021年12月7日8時30分 投稿
    【視点】

     タリバンが実際に行っていることを見るならば、タリバン内の穏健派とは交渉が可能だという発想が幻想であることがわかります。重要なのは国家主権の観点から考えることです。タリバンがアフガニスタン国内で行っていることは、基本的に内政問題です。これに

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