「犯罪集団」が乗っ取った病院の惨状 特命医療チームが立ち向かった

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編集委員・須藤龍也
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 地方の病院に突然襲いかかったサイバー攻撃によって、病院の機能は停止した。

 患者の診察記録を預かる電子カルテが読めない。救急や新規患者の受け入れを中止し、手術も可能な限り延期する――。病院の医師は実感を込めてこう語った。

 「これは災害だ」

 朝日新聞デジタルでは、未曽有の脅威に立ち向かう町立半田病院のルポ(https://www.asahi.com/articles/ASPCW5SYHPCSULZU00Z.html)を11月27日に掲載した。

 「災害」という言葉の通り、事態の収束に向けて真っ先に動き出したのは、大規模災害や大事故などの現場に駆けつける災害派遣医療チーム「DMAT(Disaster Medical Assistance Team)」を中心としたメンバーだった。

     ◇

 病院がある徳島県つるぎ町は、四国山地を横切る吉野川沿いに発展した人口8千人ほどの町だ。

 中山間地域の医療を支える半田病院で10月31日午前0時半、事件は起きた。

 この日、当直に入っていた医師、河野誠也さんは、同じく当直勤務の看護師から異変を知らされた。

 「パソコンの調子が悪いようです」

 電子カルテが使えたり、使えなかったり。これでは救急の受け入れに支障が出る。

 午前3時過ぎ、病院のシステム担当者が呼び出された。サーバーのある病棟へと向かった。

 サーバーに異常が生じても、バックアップがあればなんとかなるだろう。河野さんはこの時、すぐに復旧すると考えていた。

 システム担当者とすれ違った。「パパっと直してください」。冗談交じりに、そんな言葉をかけた記憶がある。

 だが早朝になっても、電子カルテは使えなかった。サーバー室にはまだ、システム担当者がいた。

 そこで河野さんは思いもよらぬ原因を聞かされた。

サイバー攻撃ですべてのシステムがダウンした病院。対処に当たったのは災害医療チーム「DMAT」のメンバーでした。どのようにして「最低限の医療」を維持するのか。役に立ったのは、南海トラフ地震を想定した対応策でした。

 「ランサムウェアにやられま…

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