「規模ありき」55.7兆円 巨額経済対策、賢い支出からほど遠く

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伊沢友之
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 岸田政権が衆院選の目玉公約としてきた経済対策は、財政支出が過去最大の55・7兆円に上る巨額対策となった。コロナ禍に苦しむ個人や事業者への支援を理由にするが、「規模ありき」で編成が進み、緊急性の低い事業も数多く含まれた。「賢い支出」からはほど遠いバラマキ色が強い事業も目立ち、目的や効果を疑問視する声も少なくない。

 コロナ禍の国内発生から2年近くがたち、感染拡大が落ち着きつつあるいま、これほど巨額の経済対策が必要なのか。野村総合研究所の木内登英氏は「規模で国民にアピールしようとする、規模ありきの政策となっている感は否めない」と指摘する。

 実際、今回の財政支出は過去最大だった昨年4月の対策の48・4兆円や、同年12月の40兆円を大きく上回った。近年の対策の支出は、多くても10兆円台。リーマン・ショック後の2009年の対策でさえ、支出は国費で15・4兆円と、今回の3割ほどだった。

 コロナ禍の打撃はまだら模様で、影響が大きい飲食や宿泊などの業界には厳しさが残るが、コロナ前の業績を上回る業種も多い。個人も非正規の働き手と正規社員では打撃の度合いが大きく違う。それだけに、支援対象の線引きにはきめ細かさが求められたが、編成過程は与党の公約実現を最優先した利害調整に終始。兆円単位のお金の使い道が短期間にほとんど精査されずに決められた。

 肝心の経済効果も、木内氏は、実質国内総生産(GDP)を5・6%押し上げるとする内閣府の試算について、「相当膨らませて試算結果を出した印象が強い」と指摘。過去の事例などに照らすと、個人や企業向けの給付金の押し上げ効果は、内閣府の試算ほど高くないとみるためだ。

 そもそもコロナと関連の薄い予算も目立つ。

 経済対策の費用を計上する補…

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    林尚行
    (朝日新聞GE補佐=政治、経済、政策)
    2021年11月20日9時2分 投稿
    【視点】

    タガが外れてしまった。そんな印象を持たざるを得ない、今回の経済対策だと思います。昨年の2度の対策をも上回る「規模ありき」と言わざるを得ず、本当に緊急性、実効性を伴うものなのか怪しい項目も含まれています。経済への打撃の種類が違うため単純比較は

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