偶然の大統領、デクラーク氏の決断 マンデラ氏を「信じるしかない」

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元朝日新聞コラムニスト・松本仁一
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 4世紀にわたる少数白人支配をやめ、黒人勢力に権力を渡す決断をしたフレデリック・デクラークは、たまたま大統領の座についた政治家だった。

 前任のボタ政権時代は教育相。何度か記者会見に出たことがあるが、平凡な印象しか残っていない。

 1989年、ボタが病で倒れ、大統領の座が回ってきた。「閣僚中の最古参だから」というだけの理由だった。

 しかしそこから、歴史に残る大決断をする。アフリカ民族会議(ANC)の合法化、ネルソン・マンデラの釈放、アパルトヘイト廃止――。それまでだれもできなかったことを、2年の間に成し遂げたのである。

 決断の契機になったのはマンデラとの極秘会談だった。

 政権についた直後の89年10月、終身刑で服役中のマンデラを大統領官邸に呼ぶ。その時の様子を、デクラークは私にこう語った。

 「マンデラは、刑務所長が運…

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