特急やくもと新幹線で松葉がに輸送へ 12日からJR西

杉山匡史

 山陰の冬の味覚、松葉がに(雄のズワイガニ)を、特急と新幹線をつかって関西や九州などへ運ぶ「貨客混載事業」を、JR西日本が12日から始める。コロナ禍で列車利用客が減る中、新たな活路を探るための取り組みといい、カニ輸送はJR西で初めて。米子支社が8日発表した。

 支社によると、京都、岡山、鹿児島の3府県にあるJR駅内の百貨店や飲食店などから注文を受けると、鳥取県・境漁港に早朝に水揚げされた松葉がにを地元の仲卸業者が買い付ける。

 それを米子駅まではトラックで運び、岡山駅に向けて特急「やくも」で輸送し、新大阪までは「みずほ」、終着の京都駅へは「スーパーはくと」で届ける。鹿児島中央駅には岡山駅からJR九州の「さくら」を使う。

 輸送するのは、境港産のタグが付いた生きた松葉がにと親がに(雌)、ゆでた松葉がに。氷を詰めた発泡スチロール箱(1箱で15匹程度)に入れ、車両間にある保管スペース(元乗務員室)に置いて運ぶ。運賃は、新たに特別価格を設定し対応する。

 支社によると、地域の特産品を活用して地元企業などと新たな価値を見いだし、地域活性化を目指す取り組みの一環。JR九州とはこれまでに、在来線と新幹線を組み合わせて鹿児島、熊本両県からカンパチやヒラマサ、桜島大根などを大阪、京都にあるJR西系列のホテルに届けるなどの実績があるという。

 列車を使うことで翌日配送が主流のトラック輸送と比べ、水揚げ当日に届く速さが特徴。鹿児島へトラックで運ぶ場合、当日夕に積み込んでも翌日午後2時ごろ着が最短になるというが、列車だと境漁港を午前10時に出て午後5時過ぎには鹿児島中央駅に着くという。

 第1便は京都、岡山向けが12日、鹿児島へは19日の予定。その後は注文に応じて来年3月下旬まで不定期に実施する。今年度は売り上げ目標を設定していないという。

 8日の定例記者会見で佐伯祥一・米子支社長は「山陽・関西方面でも生きた松葉がにを見る機会は少なく、九州もなじみが薄い。特産品の認知度を高め、山陰の魅力向上や来県につなげたい」と意欲を語った…

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