福島・浜通り復興に米国モデル 廃炉事業めぐり調整・企業誘致めざす

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長屋護
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 核開発による放射能汚染から復興した米国北西部の地域をモデルにした民間組織が今春、福島県の沿岸部(浜通り)で設立された。震災と東京電力福島第一原発事故からの復興の推進役を掲げ、廃炉事業などへの地元企業の優先参入を調整し、企業誘致などをめざす。

 3月に設立されたのは「浜通りトライデック」。米ワシントン州のハンフォード地域の発展で中心的な役割を果たした非営利団体トライデックにちなむ。

 この地域には、原爆を開発・製造する「マンハッタン計画」で1943年に建設された核施設群がある。40~80年代に原子炉8基が稼働し、現在は解体や除染作業が続いている。

 計画により地域の人口は約千人から約5万人に。ただ、原子炉の相次ぐ停止で作業員は解雇され、地域経済への影響が深刻となるなか、85年に設立されたのがトライデックだった。

 地域の様々な意見を一つにまとめ、国にぶつけると同時に、施設群周辺の9自治体、誘致企業、教育研究機関を連携させる調整機関の役割を果たしてきた。浜通りトライデックの事務局、東日本国際大によると、2010年の雇用上昇率は全米でトップ、人口も約30万人に急増し、復活を遂げた。

 東電の副社長時代と東日本国際大客員教授として現地を2度視察した石崎芳行さん(68)は、地元中小企業の優先活用や大手企業からの人材貸出制度などを企業や自治体と協議し、ルール化したことが成功要因とみる。トライデック幹部からは①東電の拠点は福島に置き、指揮官も福島に住む②地元企業との契約比率を50%は確保すべきだ――などの助言を受けたという。

 楢葉町商工会の会長を今年5月まで9年務めた渡辺清さん(72)は、浜通りトライデックに期待を寄せる。設立直後の3月に会員を集め、勉強会を開いた。

 町の避難指示解除から6年になるが、町内居住者は人口の約6割、町内で仕事を再開した事業者は約7割にとどまる。「この機会を逃すと浜通りの発展はなくなる」と話す。

国や県が推進する別のモデルも進行中 違いは?

 気になるのは、同じ地域をモ…

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