「王国」岩手3区で小沢一郎氏が敗れ比例復活 県内勢力図どうなる

2021衆院選自民立憲

中山直樹 東野真和 大西英正
[PR]

 第49回衆院選が31日、投開票された。岩手3区では、現役最多の18回目の当選をめざした立憲民主前職の小沢一郎氏が自民前職の藤原崇氏に敗れた。世代交代か経験重視かを争点の一つに激戦が展開されたが、30代若手に競り負けた。小沢氏は比例東北ブロックで復活当選した。このほか1区は立憲前職の階猛氏、2区は自民前職の鈴木俊一氏が当選した。今回は実質的な与野党対決の構図となり、自公連携、野党共闘が進んだ。投票率は60・38%(前回59・15%)だった。

1区 階氏 実績アピール6選

 立憲前職の階猛氏が、連続6回目の当選を決めた。盛岡市内のホテルに現れた階氏は「本当に厳しい選挙戦だった。今日から新たなスタートだと思って、全力でみなさんの役に立てる仕事をして、しっかりと評価と信頼をいただけるよう頑張っていく」と語り、集まった支援者からは大きな拍手が起きた。

 政策重視の姿勢を前面に押し出して戦った。新型コロナウイルス感染拡大による地域経済への影響が大きい中、苦しむ飲食店や中小企業への支援が不足していると現政権を批判してきた。東日本大震災時に当時の民主党政権が実現した復興特別税を引き合いに出し、もう一度「支え合い」や「再分配」が必要だとも訴え、支持を広げた。

 入管収容施設で外国人女性が死亡した問題を国会で追及したことなど、議員5期目の実績をアピールした点も奏功したとみられる。

 毎晩、遊説から戻ると、大学教授や弁護士、若手起業家らとの政策議論の動画を生配信。大規模集会を開けないコロナ禍でも工夫して精力的に活動してきた。

 立憲県連とは資金問題を巡り裁判中で、県連からの応援は事実上ゼロだった。陣営からは不安の声もあがっていたが、党本部の公認を強調した。初当選時から支援を受ける連合岩手など労働組合との連携も固く、影響はほとんどなかった。

 自民前職の高橋比奈子氏は5度目の挑戦で悲願の小選挙区勝利を目指したが、及ばなかった。1年あまり文部科学副大臣を務めた実績をアピールし、河野太郎氏、麻生太郎氏など党の大物が応援に駆けつけたが、支持は広がらなかった。

 共産新顔の吉田恭子氏は、コロナ禍における給付金などの政府の対応を批判したほか、男女格差の是正や環境問題への取り組みを掲げたが、浸透は限定的だった。(中山直樹)

2区 鈴木氏 大差で10選

 10回目の当選を果たした自民前職の鈴木俊一氏は、滝沢市の集会施設で、支持者に「真の意味での復興を完成させる」と誓った。

 本州一広い選挙区を、通算30年近い議員活動で築いた支持基盤でカバーした。

 コロナ禍のため、大規模な集会は自粛したが、震災復興事業を通じて関係が強まった首長や地方議員らのほか、専門分野の医療、漁業・漁港整備などの業界団体が支持固めをはかった。

 自身も解散前から選挙区で地道に会合を重ねた。解散直前に財務相に就任したことも追い風になった。選挙終盤は他候補の応援に回り、秘書で長男の俊太郎氏が代わりに支持を訴えた。

 立憲新顔の大林正英氏は、知名度不足が最後まで響いた。

 釜石市の復興支援員や市議として、震災復興や過疎地の課題と向き合った実績から「岩手で成功事例を示せば日本の再生につながる。それが復興の恩返しになる」と訴えた。しかし、東京出身で地縁がなかったうえ、立候補表明が8月中旬と遅かった。連日50回前後の辻立ちを続け、1次産業従事者らに支持を広げたが、浸透は難しかった。

 NHK党新顔荒川順子氏は支持が広がらなかった。東野真和

3区 藤原氏 激戦制す 小沢氏 比例復活

 自民前職の藤原崇氏が、4度目の挑戦で初めて小選挙区での当選を果たした。北上市の事務所で藤原氏は「県南の暮らしを支えていくことが一番大切と訴え、皆様に『お前が代表』と言っていただいた。重い責任だと思う」と語った。

 政権交代を主張する相手の大ベテラン候補に対し、「政権交代より世代交代」を掲げて挑んだ。

 若さを生かし、活動量は豊富だった。早朝から人通りの多い場所で辻立ちをし、スピーカーを使った活動ができる午前8時以降は、多い日で1日に50~60カ所の街頭演説をこなした。小刻みに移動し、広い選挙区を網羅した。

 「ものづくり、農業、地の利を生かした物流。この地域はまだまだ成長できる」と繰り返し訴えた。復興政務官を務めた経験や、与党議員として政策実現に直接関与できる利点を強調した。この半世紀のうちに17回あった衆院選で無敗を誇ってきた重鎮の牙城(がじょう)を崩した。

 立憲前職の小沢一郎氏は、近年では異例の公示日に地元入りし、第一声で「厳しい選挙。何としてもお力をお借りしたい」と危機感をあらわにしていた。最終盤の3日間は選挙区内を約110カ所まわり、短い滞在時間ながら集まった人たちとふれ合い、票の掘り起こしに努めた。

 自民党政権が国民の暮らしを軽視した政治を続けていると指摘。国民の生活を守ることが本来の政治だと訴え、「政権をもう1回取るまで議員をやる。自民党を倒す」と執念を見せていた。

 しかし支持者の高齢化に伴って陣営の活動量の減少は否めず、若い相手候補に競り負けることとなった。(大西英正)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

2021衆院選

2021衆院選

ニュースや連載、候補者の政策への考え方など選挙情報を多角的にお伝えします。[もっと見る]