「保守王国」宮崎1区で立憲新顔が当選 2、3区は自民が守る

2021衆院選自民立憲

吉田耕一 浜田綾 神谷裕司
[PR]

 衆院選は31日、投開票された。宮崎1区は立憲民主党の新顔が自民党前職の4選を阻み、衆院選初挑戦で初当選を果たした。2012年衆院選から自民前職が独占してきた県内3議席の一角が崩れ「保守王国」が揺らいだ。2、3区は、そろって自民前職が7選。宮崎市では開票直後から投票用紙の分類機4台すべてが故障して作業が遅れ、開票は未明に及んだ。

1区 武井氏・渡辺氏競り合う

 1区は立憲新顔で前県議の渡辺創氏(44)が、自民前職の武井俊輔氏(46)、無所属新顔で前県議の脇谷のりこ氏(64)、維新新顔で元参院議員の外山斎氏(45)の3人を破った。

 選挙の構図は6月以降、大きく揺れ動いた。6月8日、武井氏を乗せた車検切れの車で秘書が当て逃げ事故を起こした。自民支持層からも批判を受けて党県連は武井氏の公認申請を見送り、選挙対応は異例の「自主判断」に決定。それでも「現職優先」の党本部は武井氏を公認する見通しとなり、納得できない脇谷氏が自民県議を辞職して無所属での出馬を表明。事実上の自民分裂選挙となった。

 漁夫の利を得たのが渡辺氏。他の3候補が保守票を奪い合う中、唯一の「リベラル系」候補として野党共闘で非自民票を集めた。非自民勢力による3選挙区の候補者すみ分けが生き、連合宮崎の推薦や県内共産党の支持も力になった。

 自民の騒動にも「審判を下すのは有権者だ」と動じず、現政権の対抗軸を示す主張は分かりやすかった。敵失で得た好機に党本部から枝野幸男代表が2度も駆け付けるなど、終盤の応援攻勢で「勝てる可能性」を示したのも大きかった。

 武井氏は車の不祥事について地元で公式な謝罪会見を開かず「有権者への説明責任を果たしていない」と最後まで批判された。前回を上回る400超の団体から推薦を得たが、女性など個々の反発は根強かった。

 公示後に「想定外の劣勢」が伝わると、応援に消極的だった党員らも「負けたら自民の恥だ」(自民県議)と奮起。所属派閥の領袖(りょうしゅう)・岸田文雄首相も応援に入ったが、手遅れだった。

 武井氏を批判した保守系の脇谷氏と外山氏は、不祥事を嫌う保守層の受け皿にと目論(もくろ)んだが、組織力で及ばなかった。(吉田耕一)

2区 江藤氏 組織力生かし7選

 2区は自民前職の江藤拓氏(61)が7回目の当選を果たした。党の若手らの応援で選挙期間の半分を県外で過ごしたが、高い知名度と強力な組織網で与野党一騎打ちの戦いを制した。

 江藤氏は日向市の事務所で、集まった支持者らを前に「これからの人生を国と愛するふるさとに捧げ、全身全霊で精進する」と宣言し、「まずは新型コロナで傷んだ経済を立て直したい。閣僚を経験し、今後が勝負。皆様の役に立てるよう尽力する」と述べた。

 選挙で陣営は約3千人の党員がいる2区を4ブロックに分け、各選対が巡回ルートや行程を調整するなど過去以上に組織力を生かした態勢で臨んだ。約1200団体から推薦を集めた。

 それでも、「余裕があるから地元を空けるわけではない」と江藤氏は繰り返した。地元に戻った27日、支援者らに「与野党の熾烈(しれつ)な争いを目の当たりにし、皆様の応援が当たり前ではないと痛感した」と述べた。

 江藤氏本人は、ブログで毎日欠かさず活動報告を掲載。陣営はツイッターで選挙カーの経路や演説予定をこまめに発信するなど、ネットも積極的に活用した。

 野党統一候補で国民新顔の長友慎治氏(44)は、昨年8月の立候補表明から1年以上、選挙区をくまなく回り続け、着実に知名度を広げていった。選挙期間中は党から玉木雄一郎代表や榛葉賀津也幹事長、参院議員らが応援に続々と来県。旧民進系の支持者に加え、無党派層からも支持を集めたが及ばなかった。(浜田綾)

3区 古川氏 2氏を退け7選

 3区は自民前職の古川禎久氏(56)が新顔2人を退け、7選を果たした。

 午後8時すぎ、都城市の事務所に姿を見せた古川氏は支援者から大きな拍手を浴び、万歳で祝福された。

 古川氏は「選挙中、国民の皆さんから、これまでの自民党に対する不信の声を聞いた。正直な政治をしてきたのか、度量のある政治をしてきたのか。一番大事なことは政治への信頼を取り戻すことだ。岸田政権は聞く耳を持つ政治、寛容な政治を目標に掲げている」と当選の弁を述べた。

 9月29日の自民党総裁選の直後に約6年間所属した石破派を退会。岸田内閣で法相として初入閣した後、竹下派に入った。選挙期間中は公務などで1日だけしか地元入り出来なかったが、選挙区内に張り巡らせた後援会が「大臣の留守をしっかり守る」と一丸となり、走り回った。

 共産新顔の松本隆氏(60)は3区内を選挙カーで巡って街頭演説を繰り返し、野党共闘による政権交代を訴えたが、支持は広がらなかった。

 NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で(N党)新顔の重黒木優平氏(34)は自らポスターを貼って回ったが、浸透しなかった。(神谷裕司)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【本日23:59まで!】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

2021衆院選

2021衆院選

ニュースや連載、候補者の政策への考え方など選挙情報を多角的にお伝えします。[もっと見る]