日韓関係冷めたまま、「現金化」へ着実に進む 元徴用工判決から3年

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鈴木拓也=ソウル 相原亮
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 韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工への賠償を命じた判決から30日で3年になる。関係悪化の責任は韓国側にあると主張する日本政府に対し、韓国政府は改善に向けた日本側の努力が足りないと不満を募らす。立場の隔たりが埋まらないまま、企業が韓国内にもつ資産を売却して原告への賠償にあてる「現金化」に向けた手続きは着実に進む。

 元徴用工訴訟で大法院は2018年10月30日、日本製鉄(旧新日鉄住金)に元徴用工らへの賠償を命じた。さらに同年11月には三菱重工業にも元徴用工や元女子勤労挺身(ていしん)隊員らへの賠償を命じた。「1965年の日韓請求権協定で補償問題は解決済み」とする日本政府は判決を国際法違反として、支払う必要はないとの立場を貫いている。

 「強制徴用被害者の補償問題の原則を崩してまで、日本と合意することはできない」。21日の韓国国会で、鄭義溶(チョンウィヨン)外相はこう強調した。原則とは、文在寅(ムンジェイン)政権が掲げる「被害者中心主義」や「判決の尊重」のこと。賠償に代わる解決策は原告の賛同が必須で、三権分立により司法判断への介入はできないとの主張だ。

 日韓両政府の関係者によると、それでも鄭氏は9月23日に米ニューヨークで茂木敏充外相と会談した際、笑顔で「ケミストリー(相性)が合いますね」と友好ムードを演出した。解決の難しい歴史問題と、安全保障や経済などでの協力を切り離す外交に文氏がこだわっているからだ。

 文氏の支持率は今春に一時20%台に下落し、レームダック(死に体)化が進むとの見方が広がった。だが、最近は持ち直し、残り任期が7カ月に迫るなかで、40%前後で推移する。

 任期が来年5月に迫る文氏だが、韓国政府関係者によると、政権運営に自信を持ち、南北関係と対日関係の改善を諦めていない。12月上旬に、ソウルで国連平和維持活動(PKO)閣僚級会合が予定され、韓国側は茂木外相と岸信夫防衛相の出席を打診。この機会に、米国が望む安保協力を通じて日韓関係を上向かせようともくろむ。

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 元徴用工訴訟でも、韓国側は…

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    箱田哲也
    (朝日新聞記者=朝鮮半島担当)
    2021年10月30日9時34分 投稿
    【解説】

     文在寅政権の外交・統一政策は、これまでおおむね、言うなれば民族重視派と国際重視派の攻防が繰り返されてきた。とりわけ歴史問題で敏感にならざるをえない日本との関係もその構図上にある。日本から眺めると、何の変わりもないような対日政策も実は、交渉

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