中国の極超音速兵器に米軍衝撃 「スプートニク・ショックに近い」

ワシントン=園田耕司
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 米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は27日の米テレビで、中国が今夏に核搭載可能な極超音速(ハイパーソニック)兵器の実験を行ったと米当局者として初めて認めた。1957年に旧ソ連人工衛星を人類史上初めて打ち上げた「スプートニク・ショック」の衝撃を例に出し、「極めてそれに近いと思う」と語った。

 ミリー氏が発言したのは米ブルームバーグのテレビ番組のインタビュー。ミリー氏は「我々が目にした極超音速兵器の実験は極めて重大な出来事だった」と強調し、「非常に懸念している」と述べた。ただし、米側が確認した実験内容の詳細についての説明は避けた。

 実験の実施については、英紙フィナンシャル・タイムズが今月中旬に報道。今夏にロケットで打ち上げられた極超音速滑空体が、地球をほぼ一周した後に下降して、標的から約40キロ外れた場所に着弾したと伝えていた。一方、中国側は「宇宙船の再利用技術の試験だ」などと報道内容を否定。外務省の汪文斌副報道局長は28日の定例会見で「中国を仮想敵とする冷戦思考はやめるべきだ」とし、ミリー氏にも反論した。

 極超音速兵器は音速の5倍(マッハ5)以上で飛び、操縦可能だ。迎撃は極めて難しく、軍事専門家の間では戦争の形態を変える「ゲームチェンジャー」と呼ばれている。そのため、米中ロ3カ国を中心に激しい開発競争が繰り広げられているが、米側の危機感は強い。米戦略国際問題研究所(CSIS)のトーマス・カラコ上級研究員は「中ロ両国の開発は米国よりも明らかに先行している。米国は急いでそのギャップを埋めようとしている」と指摘する。米海軍は21日、陸軍と合同で実施した極超音速兵器の実験に成功したと発表。一方、米国防総省によると、同日にアラスカ州で極超音速兵器の技術開発に向けたデータ収集のために実施した別の実験は失敗したという。

 極超音速兵器をめぐっては、米中ロ3カ国のほかにも、豪州、インド、フランス、日本、ドイツで開発・研究が進められている。日本では2021年度予算に極超音速誘導弾の研究費として90億円が計上されている。北朝鮮は9月下旬、極超音速ミサイルの試験発射を行ったと主張した。(ワシントン=園田耕司

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