米軍の情報戦略の光と影 写真1万枚、沖縄県公文書館が入手・公開

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国吉美香
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 戦後20年余り沖縄を統治していた「琉球列島米国民政府」(USCAR(ユースカー))の「広報用」写真約1万枚を沖縄県公文書館(南風原町)が入手し、ネットで公開している。日米の交流や沖縄の復興の歩みがつぶさに記録されている一方で、基地被害の実態は残されておらず、光の部分を強調する米軍の情報戦略が見てとれるという。

 サンタクロースからプレゼントを受け取り笑顔を見せる沖縄の子どもたち、米国人講師から熱心に英語を学ぶ地元の教師、着物姿でひな人形を囲む米国人に、沖縄と米国の商業フェアを楽しむ人々――。

 写真は、米軍統治によって発展する沖縄の姿をPRする住民向けの広報誌「今日の琉球」や「守礼(しゅれい)の光」に掲載されたものが中心で、USCAR広報局が撮影した。USCARは1972年の施政権返還まで沖縄を統治。その広報の仕事は、基地を安定して運用できるよう、現地の情報収集・発信を行うことだった。

 米国国立公文書館では「風習と伝統」「行政」「公衆衛生」など85項目に分類されてこうした写真が保管されており、約10万枚あると推計されている。

 県公文書館は2001年までに、米軍人が務めたUSCARトップの高等弁務官に関する写真など主に2項目計約1万枚を収集・公開。17年から再び収集を始め、「一般教養」「琉米親善」「警察及び消防」「軍」など48項目、1万1481枚を今年8月から初めてネットで公開した。

 資料の整理にあたった麻生清香(さやか)・公文書専門員は「復興の歩みを進める沖縄社会が記録されている。撮影日や詳細な説明も付いていて行政の資料として価値もある」と評価する。一方で「これらは米軍統治の光の部分。基地被害については実態を映しておらず、施政権側の視点という前提に立ち写真を見る必要がある」と話す。

 例えば、「警察及び消防」の…

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