「消滅可能性都市」で見た光景 不便でも住みやすいまちづくりとは
92万3033人。2020年国勢調査を基に和歌山県が6月に発表した県の人口だ。1985年の108万7206人をピークに減少傾向が続き、2015年に100万人を切った。14年には民間研究機関の日本創成会議が発表した、人口減少が進み存続できなくなる自治体の「消滅可能性都市」に、県内の23市町村が名を連ねた。衆院選を前に、その現場を歩いてみた。
9月中旬、あたりが暗くなった夕暮れ過ぎ。世界遺産・高野山の玄関口である南海電鉄・高野山ケーブルカーの高野山駅待合室で、高野町に住む女子高校生(2年)が親が迎えにくるのを待っていた。橋本市内の学校に1時間半かけて通っている。「高野山には高校はひとつだけ。下に下りるとお店も色々あるし、友達も多い」。小中学校の同級生には、橋本市内などに引っ越した人もいるという。「寂しいけど、高野山の生活もいい。下より空気がきれいな気がする。私はまだここで住みたいかな」と話した。
県によると、20年度の県全体の人口1千人あたりの転出者は27・0人。高野町の転出者は47・1人で県内で最も高い。町の担当者は、「生まれてくる子どもが少なく、亡くなる方が多い『自然減』に加えて、高校進学のための引っ越しなどで転出する『社会減』も多い」と説明する。人口維持のために、小中学校での英語教育の強化や進学のために転出した後に町に戻ってきてもらうための「ふるさと教育」に力を入れているという。
奥の院近くの飲食店に勤める賀原美恵子さん(73)は毎日、仕事終わりに弘法大師に手を合わせにいく。「高野山はいいところよ。見守ってくれているから」と御詠歌を聞かせてくれた。
月に2回、町内の別の家に住む三女と一緒に紀の川市の整体院に行く。「ついでに日用品も食品もまとめて買う。何でもそろうから。紀の川市に住む孫の顔も見に行くのよ。高野山は若い人には住みづらいかもしれないね」
「離れたくないね。住み慣れたから」
人口わずか約400人の北山…