「子ども省庁」創設に動き 県内虐待相談12年連続増 支援者は期待

中村瞬

 次期衆院選では、子ども・子育て政策が主要な論戦テーマの一つになりそうだ。岸田新政権は「こども庁」創設をめざし、立憲民主党も新組織「子ども省」を掲げる。群馬県内の児童虐待の相談件数は12年連続で増えており、被害者支援に携わる人たちから、政治の取り組み強化に期待する声が出ている。

 昨年度、県内の児童虐待の相談は2286件と過去最多を更新し、今年度も8月末時点で802件(速報値)と高い水準で推移している。

 太田市で昨年12月、ボランティア団体「パワチル群馬」が主催したイベントで、30~50代の男女4人が過去に受けたつらい虐待経験を語った。

 前橋市の50代女性は、高校の普通科から大学進学を希望していたが、父から「女が大学に行くと生意気になる」と言われ、受験できたのは商業科のある高校だった。母親からは暴力や暴言を受け続けた。怒りが収まるまで耐えるしかなく、成人した今も、相手が怒っているとわかると恐怖でパニックになるという。

 太田市の40代男性は、サッカーでミスをするたびに父から平手打ちをされた。テストで90点以下だと母から「死んじまえ」「ダメな人間」とののしられた。男性は時折、涙で言葉を詰まらせ「親の顔色ばかりをうかがう毎日で、自分が何をしたいのかがずっと見えなかった」と振り返った。

 パワチル群馬は、緊急性が高く、家に帰りたくない子を児童相談所からの事業委託として民間で短期間保護する「短期民間養護者制度」の実現を求めている。

 代表の木部真理子さん(53)は、「子どもを守るという目的に特化した省庁は必要。10年以上前から創設を訴えていた政党はあったが、ようやく動き出したという印象」と話す。

 日本は子どもの福祉に十分に力を注いでいないと感じてきた。衆院選を前に、政党が子ども関連の政策を打ち出すことを歓迎する。虐待防止には子育て中の親への支援も必要と考えており、「悩んだり困ったりしている親の支援にも力を入れてほしい」と期待する。

 パワチル群馬は、昨年に続いて今年も「子ども虐待防止策イベントin群馬2021」を開催する。親から虐待を受けて育った人が、親に向けた手紙を読む形で体験を語る。

 イベントではこのほか、親からの虐待を告白した手紙を集めた「日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?」を編集した虐待問題に詳しいフリーライターの今一生さんが被害の現状について話すほか、参加者同士が討論する。

 11月27日午後1時半から、太田市美術館・図書館3階視聴覚ホールで。定員20人。無料だが事前申し込みが必要。メールアドレス(powercgunma2021@gmail.comメールする)に、氏名と自分で考えた子ども虐待防止策を記載して送る。虐待体験の語り手も募集している。当日はYouTubeでの中継もある。(中村瞬)…

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