「良いことがない」広島から岸田首相誕生へ、地元が寄せる期待と視線
29日投開票の自民党総裁選で、岸田文雄氏(64)=衆院広島1区選出=が新総裁に選出された。10月4日にも開かれる衆参本会議で、広島から戦後3人目となる「第100代内閣総理大臣」に指名される見通しだ。被爆地を選挙区とする初の首相ともなる。(大久保貴裕、比嘉展玖、宮城奈々)
広島からの新総裁誕生を見つめながら、県連幹部が繰り返したセリフがある。
「なに一つ良いことがない。つらい、厳しい、悔しい日々だった」
河井克行元法相夫妻による買収事件で政治不信がうねりとなり、4月の参院再選挙で敗北。2019年参院選をめぐって夫妻側に提供された1億5千万円の詳しい説明を求めても、党本部はまともに取り合わない。そのなかで迫る衆院選に、県連内には無力感すら広がっていた。「ダメなことをダメと言えない自民党。今日がそれを変えるスタートだ」。幹部はこう息巻いた。
この日、県連の地方議員や岸田氏の後援会幹部ら約200人は、広島市中区のホテルに集合。大型モニター越しに東京で行われている開票の様子を見守った。
午後2時ごろ、1回目の投票で岸田氏が首位に立った時は互いに拳を挙げて静かに喜び合ったが、午後3時半に決選投票の結果が発表されると、会場内には大きな歓声と拍手がわき起こった。
特別な思いで岸田氏の姿を見つめる人もいた。自民の公認候補として再選挙を戦った西田英範さん(40)。朝日新聞の取材に「あの時は岸田氏と二人三脚で走ったが、有権者から『信頼できない』との生の声をたくさん聞いた。本当に苦しかった」と振り返った。「でも、すぐに『説明責任が大事だ』と訴え、動いたのが岸田さんの強さ。国民に近い政治を実現してくれるはずだ」
後援会長「頑張ったね、とは言わない」
新首相となる岸田氏は早速…