「防災観光ふろしき」完成 NPO法人と大学生らが共同制作

柏木友紀
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 荒川・隅田川などに囲まれ木造住宅も密集する東京都墨田区内で、水害や地震・火災などに役立つ情報を地図上に落とし込んだ「防災観光ふろしき・旧本所区エリア版」が完成した。特殊な撥水(はっすい)加工を施したポリエステル製で、防災活動に取り組むNPO法人と大学生らが共同で制作。非常時には水をくむバケツ替わりにもなるほか、博物館や地域の名所などの観光情報も盛り込まれている。区内小学校で卒業記念品として配布したいと、先月からクラウドファンディングで資金を募っている。

 制作したのはNPO法人「燃えない壊れないまち・すみだ支援隊」のメンバーと、墨田区の防災について研究している芝浦工大の学生ら。3年前に作製した旧向島区エリア版(北部版)に続き、今回は東京スカイツリーより南側の地域を中心とした区南部の旧本所区エリア版で、昨年初めから制作を開始していた。昔ながらの木造家屋が並び、消防車が入れない入り組んだ道も多い北部に対し、南部は関東大震災空襲で焼けた地域が多く、道路は碁盤の目状に整っているのが特徴。

 学校や警察署、消防署など目印になる公共施設をはじめ、地震・火災時の集合場所や避難場所などのほか、幅員が広く歩道が整備された道路も目立つ色で表示した。一昨年の台風19号で荒川の水位が上昇、浸水被害の危機が迫った経験から、各地域の標高を色で塗り分け、大雨時に危険なアンダーパスの箇所なども表示した。垂直避難や広域避難など、水害時は地震時と避難方法が異なる注意喚起も表記した。

 一方、地域に愛着を持ってもらえるよう墨田区の文化や産業などに関する博物館や工房などもピックアップ。このエリアに多い銭湯やホテルのほか、吾妻橋両国橋国技館など観光名所は立体図で示した。全体のイラストは地域ゆかりの浮世絵師・葛飾北斎の「北斎漫画」がモチーフで、ユーモラスな江戸庶民の姿を随所にあしらった。

 地元の有志や、防災の専門家、デザイナーらが参加する「すみだ支援隊」事務局の大鋸(おおが)幸絵さん(39)は「防災マップがあっても、普段はあまり開かない。日常的に使う風呂敷なら、平時から地域の特性や避難の方法などに親しんでもらえる」と話す。地域の企業らに声をかけて協力を募り、芝浦工大の学生によるボランティア「すみだの巣づくりプロジェクト」と共同で、風呂敷を使った小学校での防災教室や防災遠足など、様々な活動を進めてきた。

 昨年3月からのコロナ禍で町歩きが出来なくなり、学生たちは専用ソフトなどを使って地図データを風呂敷に落とし込んだ。システム理工学部4年の生川優衣さん(22)は地域の住民への防災意識調査も実施し、「地域の若者世代をどう防災活動に巻き込んでいくかが大事なのだと分かりました。風呂敷プロジェクトなどを通じて防災に目を向けてもらえたら」と話す。

 クラウドファンディングにより、地域の小学6年生に、卒業記念品として「ふろしき」と防災学習マニュアルを併せて配布する計画だ。専門家の意見を参考に危険度の高い地域の小学校から優先的に配布対象とし、集まった金額によって配布枚数を増やす。今後、防災地図アプリの開発などにも取り組みたいという。詳細や支援はウェブサイト(https://www.furusato-tax.jp/gcf/1263別ウインドウで開きます)まで。(柏木友紀)

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