石木ダム訴訟原告側、控訴審の審理再開を申し入れ
長崎県と佐世保市が川棚町で建設を進める石木ダムを巡り、水没予定地の反対住民らが県と市に工事差し止めを求めた訴訟(6月18日結審)について、原告と弁護団は24日、8月の豪雨を踏まえ「100年に1度の大雨が降っても洪水は起きないというデータが得られた」として、審理の再開を福岡高裁に申し入れた。
8月の豪雨では同町に大雨特別警報が出され、流域4地点の24時間雨量の平均は494ミリを記録。県が100年に1度程度の確率で降ると仮定した400ミリを上回った。一方、3時間雨量は平均125ミリで、県の想定雨量の6割だった。浸水被害などはなかった。
京都大の今本博健・名誉教授(河川工学)は石木川と川棚川の合流付近の流量を検証した。8月のピーク時の流量は、県が想定するピーク時の流量(毎秒1320立方メートル)の6割とすると毎秒800立方メートル。その時の実際の水位は3・1メートルだったことから県が安全に流せるとする水位5・8メートルに対して2・7メートルの余裕があることが分かった。
原告弁護団は、今本氏の論考を踏まえ、その2・7メートルに川幅の70メートルと、洪水の流速毎秒5メートルを乗じ、毎秒945立方メートルの「余裕」があったと結論。これに実際の流量800立方メートルを足せば1745立方メートルに。県がダム建設の前提にするピーク流量1320立方メートルを大きく上回ると説明する。
川棚町でこの日記者会見した魚住昭三弁護士は「現状で、ダムがなくてもこれだけの水を十分安全に流下させられる」と主張。同席した住民の炭谷猛さんは「裁判所に方針転換を迫るのは容易でないが、初めて得られたこの貴重なデータを踏まえて、弁論を再開してほしい」と話した。
訴訟は6月に結審。10月21日に判決が予定されている…