コロナ下の台風シーズン 茨城各地で「分散避難」呼びかけ
本格的な台風シーズンに入り、茨城県内の市町村がコロナ下での住民避難に向けた備えを急いでいる。体調不良者を受け入れる場所を分けたり、密を避けるため避難所の混み具合を知らせる仕組みを整えたり。自然災害と感染症の複合災害を起こさないよう、様々な場所で身を守る「分散避難」が合言葉だ。台風14号は18日夜から19日朝にかけて県内に接近する見通し。
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水戸市役所で7日、災害時に看護が必要な人らを受け入れる「福祉避難所」を想定した訓練が開かれた。市医師会や県看護協会などが協力し、看護師や介護福祉士らも参加した。
避難してきた人が新型コロナウイルスの症状を訴えた場合に備え、看護師らが体温・脈拍のはかり方を職員に指導する場面もあった。
水戸市には82カ所の指定避難所がある。従来は高齢者らに避難を呼びかけ始めるタイミングでは、市内34カ所の市民センターだけを開設していた。だが昨年、災害時に被害のおそれがある地域では、すべての避難所を一斉に開ける運用に改めた。避難先を増やして1カ所当たりの密集度を下げ、コロナ感染のリスクを減らすのが狙いだ。避難所の運営にあたる職員数は3倍程度に増やした。
新たにまとめた指針では、一般の避難者は小学校に逃げてもらい、コロナの濃厚接触者や体調不良者らは中学校へ、など受け入れ場所を細分化した。介護など支援の必要がある人の避難所の運用も変更。従来、民間の福祉施設を確保していたが、感染が施設内に広がるリスクがあるとして、福祉避難所にはアダストリアみとアリーナなどを使う。市防災・危機管理課の小林良導課長は「住民が避難をためらうことがないよう、感染対策には万全を期している」と説明する。
新型コロナの感染拡大を受け、内閣府は昨年来、避難所運営のあり方について相次いで通知。避難所への誘導を強調するのを改め、親戚・友人宅など多様な場所に分散して避難させることを推奨する。出来るだけ多くの避難所を開設することや、ホテルなど民間施設の活用なども呼びかける。
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県内の市町村の多くは、コロナ下での新たな避難所運営指針をまとめている。感染拡大を招かないよう、それぞれ知恵を絞る。
結城市は、混雑する避難所を避けて乗用車内で過ごす人が出ることを見越し、鹿窪(かなくぼ)運動公園の駐車場(580台)を開放する計画だ。敷地内の体育館が避難所の一つとなっているため、そこで受け付けをすれば、食料品などの支援物資も受け取れる。担当者は「分散避難を呼びかけるなかで、車中泊の選択肢も用意したかった」と話した。
つくばみらい市は、避難所内で素早く設営できる「ワンタッチ式避難用テント」を1千張り購入する予定。段ボール製の仕切りも持っているが、慣れた職員でも1区画10分程度かかる。ワンタッチ式は30秒程度ですむといい、「天井もあり周囲から隔離できる」(市防災課)という。
避難所を利用する側からは、どこが空いているか家を出る前に確かめられると便利だ。
県は5月、様々な施設の空き情報を配信するベンチャー企業「バカン」(東京)と協定を締結。県内全市町村の避難所の混雑具合を発信する仕組みが動き出した。バカン社のHP(https://vacan.com)で今月16日から全44市町村の様子が閲覧でき、各市町村のHPではリンクを張る作業が順次進んでいる。
「VACAN(バカン) Maps(マップス)」というページに入ると、各避難所の場所が地図上にあらわれる。知りたい場所を触ると、「空いています」から「やや混雑」「混雑」「満」までの4段階で表示される。
スマートフォン向けのアプリと違って、ダウンロードや会員登録などわずらわしい手続きなしに使い始められる。混雑状況のデータは、各市町村が随時入力する。
県の防災・危機管理課の担当者は「このシステムを使えば、自分が暮らす近隣市町村の避難所の様子も簡単にわかる。自治体の境を超える広域避難にも便利で、思い思いの場所に逃げる参考にして欲しい」と話した…
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