第3回公助の巨大な「穴」、コロナ禍で浮き彫りに 最後の安全網機能せず

有料記事長期政権を問い直す

編集委員・清川卓史
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 食料配布を待つ長い列に、3歳の子の手をひく30代の母親の姿を見たときの衝撃は今も胸に残る。

 コロナ禍での貧困危機。「炊き出し」や年末年始などの食料支援の会場に何度も取材で足を運んだ。工場を雇い止めされ寮にいられなくなった20代男性。飲食店が倒産し職探し中の40代男性。IT関係職種で「派遣切り」にあい失業手当も切れたと語った50代女性。様々な年代、職種の男女が列に並んでいた。

 多くは、不安定な働き方で暮らしをつないでいた人々だ。在宅ワークなどで継続して収入を得られる層との格差も鮮明になった。

 安倍・菅両政権は、各種の臨時的な給付金、無利子の「特例貸し付け」などの対策を講じた。急場をしのぐ生活資金の支援として意味はあったが、危機は長期化し、応急処置だけでは支えきれなくなっている。

歴代最長を記録した安倍政権と、その路線を継承した菅政権の計9年はどのようなものだったのか。自民党総裁選、衆議院選挙が迫る中で、記者たちが改めて考えます。

 特例貸し付け(緊急小口資金・総合支援資金)の利用は、4日時点で271万件を超え、総額1・2兆円に迫る。二つの資金の貸付件数はリーマン・ショック後の2009年度・10年度の合計の25倍を上回る水準だ。

 借り入れは最大200万円。住民税非課税世帯への返済免除はあるが、一定の収入が戻れば返済の負担が家計を圧迫する。にもかかわらず、なぜこれほどの申請が殺到したのか。背景には、生活保護の利用に至らない「一歩手前」の困窮層にとって、利用できる経済的支援策がほとんどない、という現実がある。コロナ禍が浮き彫りにした公助の巨大な「穴」と言える。

 この「穴」をふさぐためには…

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