賞金は国内最高額 エンタメ型陸上大会誕生も「言い訳できない」課題
日本陸上界に一石を投じる新たな大会が誕生した。これまでの国内の大会は選手が記録を出すことに重きが置かれていたが、“エンターテインメント性”を前面に押し出し、観客を楽しませようという試みだ。それも、地味な種目とされてきた中距離種目に特化する。どんな大会なのか。大阪市のヤンマーフィールド長居で初めて開かれたレースを訪ねた。
最後まで生き残るのは誰だ
8月20日にあった「TWOLAPS ミドルディスタンスサーキット大阪大会」。日本では見慣れないレースが展開されていた。
トラックを1周(400メートル)走るごとに、最下位の選手がレースから退場していく。「エリミネーションマイル」と呼ばれる非五輪種目だ。計1600メートルを走る中で、普段よりも駆け引きが重要になり、直線に入ってからの選手の激しい競り合いは見ものだった。
男子の2組目を制したのは、東京オリンピック(五輪)5000メートルに出場し、調整不足だったという坂東悠汰(富士通)。最初の1周を6人中5番手で通過して脱落を免れた坂東は、最後の1周では第3コーナーでトップに立って後続の2人を突き放した。「最後はしんどかったですけど、楽しかったです」と笑顔を見せた。
種目だけではない。1位の選手がゴールすると、トラックに設置されたゲートの上から、ボンッ、ボンッと、炎が噴き出した。カーレースさながらの派手な演出に観客席からは驚きの声が上がる。
種目の裾野を広げようと、小学生から高校生も参加した。選手の息づかいが感じられるようにトラック内に観客を入れたり、競技の合間には大阪・箕面自由学園高校チアリーダー部が演技を披露したり。日本選手権やグランプリシリーズなどの主要な国内大会は選手の記録に観客が一喜一憂するのが中心だった。ところが、この大会では、選手が選んだ音楽が流れるなど普段の大会とはひと味違った。
大会を企画したのは、陸上クラブ「TWOLAPS」。ロンドン五輪男子800メートルに出場した横田真人さん(33)が代表を務める。クラブでは、東京五輪女子1万メートル代表の新谷仁美らを指導する。
横田さんはトップ選手が出場するエリート種目のレース中の実況も担当した。これも陸上大会では珍しい。「率直におもしろい大会になった。同時に、どうやったら選手やお客さんが楽しんで陸上を見てくれるのか、考える機会になった」と話す。
国内では破格、世界に通じる賞金
大会にはもう一つの目玉がある。それは、国内では最高額という賞金だ。
初めての大会となった大阪大…