深江駅に響く復活・深江音頭 東灘高生の演奏放送
【兵庫】「深江よいとこ 復興は進む」「六甲のおろし ヨイヨイ」――。
阪神深江駅(神戸市東灘区)の構内には午前10時になると、明るく軽快なテンポの曲が1時間ほど流れる。戦後復興への願いが詰まった「深江音頭」。約70年前に廃れてしまい、覚えている人も数えるほどだったが、駅長の提案に応えた高校とお年寄りの協力で復活した。
深江南町二丁目自治会長の森口健一さん(75)らによると、戦時中、空襲によって深江のまちの大半が焼失したという。終戦直後、住民を元気づけようと、後に地元村議を務めた黒田清一さんが作詞し、村職員の細野寛一さんが曲を付け、深江音頭が生まれた。
地元の特色をうたった歌詞は6番まで。1946年5月、神社の祭りでお披露目された。振り付けもでき、少なくとも46~48年8月の神社の盆踊りで、多くの住民が踊ったと伝わる。
だが50年の合併で、深江が神戸市に組み込まれたこともあってか、深江音頭が踊られる機会はなくなったという。
それから長い時間が流れた。
阪神電車の御影駅管区駅長の澤昌弘さん(56)が、「深江駅で吹奏楽部の曲を放送できないか」と、県立東灘高校に持ちかけたのは昨年12月のこと。「地域とのつながりを大切にしたい」と考えていた。
年が明けて1月、今度は高校側から森口さんに「深江に伝わる独自の音楽はないか」と相談があった。森口さんは、深江音頭を推薦した。
ただ、歌詞は残っていたものの、楽譜はない。地元の80代の女性2人が覚えていたため、3月に高校まで来て歌ってもらい録音し、譜面に起こした。その譜面を吹奏楽部員が演奏し、8月1日から深江駅で流し始めた。
当初は8月末まで流す予定だったが、地域住民の要望で9月末まで延長された。
駅に掲示した歌詞を眺める人も多い。「深江音頭を通じ、住民や学校とのつながりを強くしたい」と澤さん。森口さんは「コロナ禍が収束したら、夏に盆踊りを開いて音頭を復活できたら」。
東灘高校では、10月6日に予定される体育祭で、1年生の女子生徒がオリジナルの振り付けで踊りを披露する計画が進む。
朝田正樹教頭(57)は「高齢者の方々に喜んでもらい、生徒には地域に愛着を持ってほしい。継承のために貢献をしていきたい」と話す…