コロナ感染の人工透析患者、崩れる「原則入院」 綱渡りの現場

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石塚広志
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 新型コロナウイルスの「第5波」で感染者が激増し、感染した人工透析患者がすぐに入院できない事例が増えている。透析患者の死亡率は一般の約16倍にも上り、危機に直面している。(石塚広志)

満床…感染しても自宅で待機

 東京都新宿区の下落合クリニックの院長で、透析関連の3学会でつくるコロナ対策合同委員会で委員長を務める菊地勘さん(50)は、都内の透析患者がコロナに感染すると入院調整にあたっている。

 8月16日夕、ある大学病院から「コロナ病床は満床で、当院には入院できません」と調整の依頼を受けた。

 この大学病院では、発熱などの症状があるため、PCR検査を受けた40代女性の透析患者が陽性と判定されていた。

 人工透析は重い腎臓病の患者が機械を使って血液を体外で濾過(ろか)するもので、患者は週3回、1回あたり4~5時間の透析を受けないと、死に直結する。自宅で透析をする患者も一部いるが、大半は通院して透析を受けている。

 女性も施設に通っており、3日前に透析を受けたのが最後だった。この日のうちに透析をする必要があり、感染を広げないように、ほかの患者がいない夜を待って透析を受けた。自宅から通院している施設まで、保健所が送迎したという。

 女性は18日、ベッドが空いた総合病院に入院することができた。

 厚生労働省の指針で、免疫力が弱い透析患者は、無症状や軽症でも「原則入院」とされている。ただ、入院先はコロナ病床に加えて透析の設備が必要で、腎臓内科などがある大学病院や総合病院に限られる。

 都内のコロナ患者の病床は約6千床あるが、透析患者を受け入れられるのは1日5人程度、2週間で延べ50人が限度だと菊地さんは言う。

 「これでも医療が逼迫(ひっぱく)した年初の『第3波』の経験を踏まえ、2割ほど増えた」

 「第5波」に見舞われた8月は、都内で週3~4人が入院待機になった。神奈川県埼玉県でも同様の事態に陥っているという。

 菊地さんは「まさに綱渡りの状態だ。入院待機は透析施設だけでなく、保健所にも負担がかかる。早く感染状況全体が落ち着いて欲しい」と話す。

死亡率16倍、高いリスク 医療逼迫の影響大

 都内には約3万3千人、国内…

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