どうなる、韓国の「言論の自由」 強気の与党、背景は…

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ソウル=神谷毅
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 韓国の文在寅(ムンジェイン)政権を支える与党「共に民主党」が提出した「言論仲裁法」の改正案をめぐる審議が大詰めを迎えている。メディアへの懲罰的な損害賠償を盛り込んだ法案に、野党やメディアは「言論統制だ」と反発するが、今月中の成立を目指す与党は強行採決も辞さない構えを見せる。背景には来年3月の大統領選をめぐる思惑や根深いメディア不信がありそうだ。

どんな改正?

 改正案が成立すれば、故意か重過失による虚偽報道による被害や精神的な苦痛が認められた場合、裁判所が損害額の5倍を超えない範囲でメディアに懲罰的な賠償を命じられる。故意や重過失を認める要件を「報復的、反復的」などとするが、法律の専門家らからは「基準が明確でなく恣意(しい)的に判断される恐れがある」との批判が出ている。

 インターネットで配信された記事で被害を受けた者に閲覧を遮断する請求権も認める。「記事中の重要な内容が真実でない場合」などに適用されるが、こちらも判断基準が明確ではないとの指摘もある。

 韓国ではオンライン媒体も含むメディア数が1万近くある。競争は激しく各社の経営も安定していない。改正案が成立して市民団体などからの賠償請求が増えれば、経営陣が訴訟リスクのある記事を書かないように記者に圧力をかけたり、記者に賠償金を払うよう求めたりする可能性がある。大手紙の元記者は「報道の萎縮が進み、言論の自由は消える。権力者の疑惑報道は難しくなる」と憤る。

 共に民主党と主張の近い進歩(革新)系のハンギョレ新聞でさえ、25日付で「民主党の独善」と題する社説で法案を批判した。「民心から戒められる」とした民主党の大物の元議員の批判を紹介しつつ、「強行採決の中断を」と社会的な合意を得るための熟議を強く求めた。

なぜ、いま?

 与党がこの時期に法案を出し…

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