代替イージス、10年遅れも 建造費の来年度計上見送り

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成沢解語 松山尚幹 伊藤嘉孝
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 防衛省は、配備を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)に代えて導入予定の代替艦の設計・建造費について、来年度予算の概算要求への計上を見送る方針を決めた。コストや運用方法など検討項目が多岐にわたるためで、数年は計上できない可能性がある。陸上イージスの配備目標だった2023年度より10年近く遅れる恐れが出てきた。

 政府関係者が取材に明らかにした。導入予定の代替艦「イージス・システム搭載艦」は、陸上用に購入したシステムを船に載せて転用する異例の試みで、検討のハードルは高い。総コストは少なくとも9千億円近くと試算されるなど突出して高額になることも課題だ。来年度だけでなく、再来年度の予算案にも建造費計上が難しい見通しだといい、計上は「早くとも25年度」との見方も省内では出ている。

 自衛隊の艦艇は、建造予算が付いても、実際の建造に5年はかかる。さらに、システムの動作試験や乗組員を習熟させる訓練などに年単位の時間を要する。これらを踏まえると、代替艦がミサイル防衛の任務に実際に就けるのは、陸上イージスの当初の配備目標だった23年度より10年近く遅れる恐れがあるという。

 その間は、現在ミサイル防衛を担っている既存のイージス艦の負荷が続くことになる。既存のイージス艦については、海洋進出を強める中国軍の警戒に振り向ける必要性が指摘されてきたが、そうした余裕は当面、生まれそうにない。防衛計画の大綱や、中期防衛力整備計画で掲げてきた政府の構想自体が揺らぎかねない事態だ。

 代替艦は、警戒の隙をつくらぬよう、通常艦艇より長い期間、洋上にとどまり任務に就くことが求められ、それを可能にするための技術面や運用面の工夫も課題として残る。

 陸上イージスの導入は、高度化する北朝鮮の弾道ミサイルを念頭に17年に閣議決定されたが、昨年6月に断念。代替策として、代替艦の導入方針が昨年12月に閣議決定されたが、今年度の予算は調査費17億円のみだ。岸信夫防衛相はこれまで「わが国のミサイル防衛に穴が開くことはいけない。一定の期間を設けた上で話を進めていく」とし、対応を急ぐ考えを示していた。

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